「共助サービス」の担い手がどう育つか
「今だけ、金だけ、自分だけ」のことしか考えない日本社会はこれでいいのかという話題が頭から離れない。
他人の幸せのために自分で出来ることをする、人に感謝されるという喜びが最高の報酬になるような「温かい社会」の構築を考える必要がある。
これは地域活動や市民活動に当てはまるのではなく、ビジネス社会で成功する場合でも同じことがいえる。企業の社会意識と社会責任が何かにつけ問われている。このような社会を持続可能にするためには、市民活動の分野では「ソーシャル・ビジネス」あるいは「コミュニティ・ビジネス」という考え方が有効とされている。
納税者としての市民の役割と豊かな市民生活を支えるために必要な行政サービスとの境界が次第に不明確になりつつある。また、行政サービスと民間企業が提供する市場サービスとの境界も重複しつつある。
そうした中で、市民自身が担うべき自助、行政が担う公助サービスとの中間領域にある、市民と行政が協働して担うべき「共助サービス領域」の拡大が想定される。共助社会を支えるために必要な協働事業推進にあたる、志をもった担い手づくりに本気で取り組む必要がある。
市民福祉の向上と市民自身の生きがい満足の両立
狭山市では協働社会の実現に向け、協働事業推進のためのガイドラインを平成24年に出している。その主な内容は、「笑顔あふれる狭山を創ろう」をスローガンにし、「協働ってなあに?」、「協働ってどのようなものがあるの」、「協働の基本的な考え方」、「協働を進める仕組み」、「望ましい協働事業例」などの具体例が紹介されている。
この中では、「協働とは」が理解しやすく提示され、「市民や市民団体と行政が、持てる知識や技術資金を出し合って、市民福祉の向上と自分自身の満足と生きがいを得ることである」と表現されている。市民は市民サービスの「受益者」であると同時に市民サービスの「提供者」でもあるという、新たな市民像を定着させる必要がある。
このガイドラインに沿って、過去3年間にわたり、市民提案型および行政提案型の協働事業が実施されてきた。提案事業に応募し、採択をうけると、協働事業補助金の支給を受けられる。市民の立場で取り組める共助の領域は、子育て支援、学童教育支援、高齢者支援、まちづくり支援などの多分野に及んでいる。いずれは補助金の対象から離れ、それぞれの協働事業が自立し、ソーシャル&コミュニティ・ビジネスに育つことが期待される。
市民から志民へ、志民が創るソーシャル・ビジネスを育てる
これからの市民は、行政サービスの受け手、享受者としての市民に留まってはいられない。市民自身が、新たな社会的サービスの作り手に変わる必要がある。このような新しい市民を育成していくことが、協働社会の実現には不可欠である。自分のことだけでなく、儲けることだけが目的ではない、ソーシャル・マインドという志の高い市民自身が共助サービスの担い手に育つことが望まれる。民間分野においても、志が新たな市場を創り出す例は沢山ある。
多摩大学教授の望月照彦氏は、私たちの「まちづくり講座」の授業の中で、「まちづくりの担い手には『志民』の出現が必要」と受講生に訴えかけ、大きな共感を得た。社会に役立つ大きな目標と志をもった志民による志民起業、社会課題解決型の志民起業が地域コミュニティを変革する時代が近づいている。
このような志民力を育てる場としても、市民大学は貴重な学びの場になり得る。