骨格筋を代謝器官として考える
日 時:7月23日(土)10:40~12:10
講 師:早稲田大学教授 秋本崇之先生
受講生:出席8名(欠席0名)
ラグビー、一人旅、自転車、酒に関する骨董品集め、最近は狩猟まで始めたという多趣味な秋本先生。狭山市のサイクリングロードにも来たことがあるそうです。生まれは豊田市でトヨタの車を乗り続けていると言います。自然豊かな所で育った先生は都会ではない所がお好きだそうで、昔は田舎だったと言う筑波大学ご出身。日本でもアメリカでも同じような環境を求めて生活し、現在は所沢にお住まいで、自転車で緑豊かな早稲田所沢キャンパスに通っているそうです。
動きを司る骨格筋
筋肉には、体を動かすための骨格筋、心臓を動かす心筋、内臓を動かす平滑筋があります。「焼肉で言えば、普通の肉はほとんどが骨格筋、ハツは心筋、ホルモンは平滑筋です。ハツが少し硬くて鉄っぽい味、いわば血の味がするのはご存じの通りです」などと話しながら、「私の愛するスーパーはヤオコー。米国産のシマチョウ(ホルモン)を売っていて鍋に入れるとおいしい。しかも安い」なんて、情報が入り、一気に親近感を覚えます。
心筋と平滑筋がとても小さいのに比べ、骨格筋は数センチになる大きな細胞もあるそうです。そして、両者が大きく違うのは、心筋、平滑筋が不随意筋なのに比べて、骨格筋は自分の思い通りに動かせる随意筋であること。確かに心臓や内臓の筋肉は人の意思では動かせません。骨格筋の動く仕組みを詳しく話された後、筋力と筋量は比例関係にあり、加齢によって筋力、筋量が減っていくことがグラフで説明されました。60代過ぎると大幅に減り、立ったり座ったりしにくくなるとの話には思わず納得でした。
骨格筋は最大の代謝器官
代謝とは栄養素が体内にある酵素の働きで分解・吸収され、体を動かすエネルギーや体を作る材料となるために再合成される働きのことです。ここで、体の各器官がどれくらいのエネルギーを使っているか見てみました。脳や肝臓などの重要な臓器が多く消費しているのは当然ですが、骨格筋は全体重の42%を占め、20%ものエネルギーを使っていました。人体最大の代謝器官と言えます。
筋肉には遅筋(赤筋)と速筋(白筋)があります。再度登場、ヤオコーのお刺身は鮮度が高いという話から、刺身は筋肉で、遅筋の代表がマグロ、速筋の代表がヒラメとのことです。マグロは疲労しにくい筋肉でずっと泳ぎ続け、ヒラメはすぐ疲れてしまうので海底に隠れていて敵が来るとものすごい勢いで逃げるとの話に、遅筋と速筋の違いがスッと頭に入りました。遅筋は脂肪をたくさん燃やし、速筋はブドウ糖をたくさん燃やします。つまり骨格筋は年齢を重ねると増えてくる代謝性疾患(脂肪を燃やせば肥満を、ブドウ糖を燃やせば糖尿病を)の予防や治療につながるというお話でした。
骨格筋の可塑性
では、筋肉の質を変えることはできるのか。運動選手は種目によって特徴的な体形をしています。筋肉には変わり得る力があるからです。持久性運動は速筋を遅筋に変えます。近年加齢による筋委縮が問題になっていますが、筋肉を使うことでそれらを抑制することができます。筋トレが筋肉量を確保し、有酸素運動が遅筋を増やします。「『筋肉は裏切らない』と良く言われますが、運動を継続してSuccessful agingに取り組んでいただきたい」と講義は結ばれました。
質疑応答
「歳をとるから筋量や筋力が減るのか、歳をとって活動量が減るから筋量や筋力が減るのか」
→ 両方だと思う。歳をとると筋肉の維持や修復に必要なホルモンが減り、同じ活動量でも筋量が減ってしまう。活動量自体も減ってくる。
受講生感想
◆ 骨格筋やその可塑性についてある程度理解できた。その上で筋トレやウォーキング等で骨格筋の可塑性の増長を図ることが理論上納得できたので実践で活かしていきたい。。
◆ 一般的に大人の体重の6割が水分ということは知っていましたが、骨格筋が体重の4割もあって、もっとも大きな組織だという認識はありませんでした。ということは、人間の身体は水と筋肉で出来ていると言っても過言ではないですね。・・・ということで遺骨の重さの軽いことに納得しました。たいへん分かり易い講義で良く理解出来ました。
◆ 筋生物学について学ぶのは初めてです。筋と言えば、狭山市推奨の「いきいき百歳体操」のサポーターとして無償ボランティアを仲間と活動しています。錘をつけての体操ですので「筋肉トレーニング」です。動かす部分によって、三角筋・前部線維・中部線維・大腿四頭筋・大殿筋・腹筋 などなど知らせていますが、常々、線維ってなんだろうと思っていました。今回、秋本先生の講義で線維について知ることができました。まだまだ勉強不足で人前で説明はできませんのでテキストを読み返します。