生活の中のウォーキング
~ 姿勢と歩き方 ~
日 時:9月17日(土)10:40~12:10
講 師:早稲田大学非常勤講師 荒木邦子先生
受講生:出席8名
毎朝シベリアンハスキーの散歩をしている荒木先生。「私は犬に健康づくりをしてもらっている」と話します。Apple Watchを付けて運動が足りているかチェックするそうで、所沢の早稲田キャンパスから新秋津駅や小手指駅まで歩くこともあるそうです。1日30分歩くだけでいろいろな健康効果があるとのことで、歩かない沖縄県民が1塁まで行くのにタクシーを呼ぶユーモア溢れる沖縄県身体活動促進プロジェクトのYouTubeから講義が始まりました。沖縄県は長寿県として知られていますが、最近肥満率が非常に高くなり、「歩くーぽん」等で歩行を県民に促進しているのだそうです。
全身の衰えは舌にも現れる
「人は足から枯れる」と言われます。今整形外科学会が推奨しているのは、「イーロコモ」。強くなくても動ける身体、多少の痛みがあっても動ける身体でいましょうということです。歩かないと歩けなくなり、認知機能やメンタル面にも影響を及ぼします。ここで、全身の筋肉の衰えは舌の位置で分かるという話が……。「骨盤をしっかり立てて正しい姿勢で座った時、舌が上の歯の裏側についていますか」との問いが出されました。思わず座りなおして確かめる受講生。高齢者をイメージした猫背で顔を前に出した座り方だと舌が下の歯の裏側につくそうです。全身の筋肉の衰えは舌の筋肉にも現れるそうで、むせるのは、口腔や舌の筋肉が衰えて飲み込みにくくなるからです。
歩行と認知症の関係=心拍数を図って歩こう
動かないと筋肉量が減少し、心肺機能低下、ひいては脳細胞の変性から認知症へとつながっていきます。1日30分歩くだけで体の至るところに健康効果が表れます。定期的に運動習慣のある人は認知症になりにくいという研究結果も出ています。6カ月間ウォーキングを継続した人はそうでない人と比較すると記憶などの認知機能が改善したそうです。
歩く際には、少しきついなと感じるぐらいの歩き方がお勧めです。歩き始めて10~15分の脈が「140 ―(年齢÷2)」が目標心拍数。勿論これに届かなくても、ちょっとしんどいなと感じるのであれば効果あり。また、全然平気ならもう少し速くしたり、歩幅を大きくしたりすると良いそうです。こうして歩くと若返りホルモンも出るそうですよ。
また、リュックの背負い方一つで姿勢に影響することも教えていただきました。雨のキャンパスで傘を差した後ろ姿から高齢者だと思っていたら学生だったことがあったそうです。こうした悪い姿勢でウォーキングしている高齢者をたくさん見かけるとのことでした。リュックの紐は短くして体に密着させ、前はバックルで固定するのが良いとのことでした。
ちょっと立つ!その習慣で良いライフ
日本人は世界一座っている国民なのだそうです。座っていると血流量が下がり、消費エネルギーも下がります。座位行動が長くなればなるほど、糖尿病、癌、心疾患のリスクが高まるのです。ここで気を付けなければならないのは、週1回程度、しっかり運動していても、それ以外の時間、座りっぱなしでいる時間が長いと健康リスクは軽減しないということです。座り続けることがリスクになるので、30分に1回は立ち上がるようにした方が良いとのことでした。座っている時間をこまめに動く時間に置き換えれば良い、立っていれば何かしらの活動をすることになるとのことです。虚弱の方を対象にした研究では、1日10分座っている時間を立つ時間に置き換えたところ抑うつが軽減したそうです。こまめに立ち上がり、動くよう工夫することが大事なのです。飲み物を冷蔵庫内に置いておき取りに行くというように、立ち上がるチャンスを生活の中に作ると良いそうです。これが、生活の中のウォーキングです。
最後座ったままの運動を3種類教えて頂きました(下写真)。運動を生活に取り入れて続けるコツは「①できそうな運動を選ぶ。②日常生活で運動できそうな場所を探す。③できそうな運動の回数を決める」ことだそうです。
東京都北区の「あるきた」は、全国で初めて立ち上がった回数がカウントされるアプリなのだそうです。ポイントが貯まって使えるのは北区の皆さんですが、他の地区の人でもダウンロードして使えるとか……。そういえば最近スタンディングワークや創造的なアイディアを出すためのウォーキング・ミーティングなんてことも良く耳にします。講義後、スタッフ2人で、「10月に受講生にプラザに集まってもらって話し合いを持つけど、立ってやりましょうね」なんて話が出ました。受講生の皆さん、当日をお楽しみに!!
質疑応答
「良いお話でしたが、本は出されていますか」
→ 日経新聞「プラス1」に5年間連載していたので、同じような内容がWebで見られる。「日経 プラス1 体づくり 荒木邦子 早稲田大学」等で検索するとヒットすると思う。
「ウォーキングにはどんな靴が良いか」
→ サイズがぴったりしたもので、クッション性の良いもの。かかとをトントンして合わせ、つま先から、また内側から紐を締める。毎回締めるのが大変なら、紐とファスナーが付いている靴がお勧め。靴底が減っている人は要注意。知らない間に減った靴底に合った足になってしまうので、ほどほどで買い替える。
「最近むせることが多い。正しく座っても舌が下の歯の後ろにきてしまう」
→ 胸の筋肉が硬いと舌が引っ張られることがある(ここで胸周りを柔らかくする体操。「上につきました」の声)。パタカラ、ベー等舌の体操をしたり、舌の位置が今どこにあるか意識することも大事。
「横になること多いが」
→ 横になることは体をリラックスさせ、骨の位置関係を整えるので良い。30分ぐらいで起き上がったり、体位を変えたりすると良い。
受講生感想
◆ たいへん聞きやすい講義をありがとうございました。生活に密着した健康維持マニュアルだと感じました。早速取り入れてみます。一番印象深かったのは「運動習慣を持っていても、座りっぱなしは健康リスクを高める」でした。まさに私の生活行動にピタリ!!の指摘だったので、日常生活の中で出来る運動を、きちんと意識を持って参考にさせて頂きます。
◆ 一時的に激しい運動をするより、日常生活に運動を取り入れることが大事という荒木先生のご意見理解できました。「あるきた」のようなアプリでデータを取ることで、励みになるのかなと思いました。
◆ 歩くことの重要性が認識できた講座内容でした。1日30分歩くことで認知症予防に繋がり、ゲーム感覚で「100-7」を考えながら歩く話は面白く実践に値すると思いました。コロナ禍では座る時間が平均7時間/日を超えている実態で、特に外出時間が減り、TVを見る時間が増えているので、座りすぎを防ぐ工夫を本日の講座を参考に実践していきたい。
◆ 1日30分歩くだけでこんなに沢山身体にいいとは……。今年5月にあまりの車運転の危なさに次女から運転免許返納を求められました。「老いては子に従え」の思いで、まだ若いけど免許返納しました。おかげで歩く事が増えましたが、夫の車に乗せてもらう事が多いのでこれからは歩くことに専念します。荒木先生からは靴の選び方をご指導頂いたので準備整います。