純米酒「奥富村 里平」 開発のこだわりと魅力
日時:2019年9月25日(水)13:30~15:30
場所:狭山元気プラザ大会議室
講師:狭山奥富村地酒会
田口博章 (有限会社 田口酒店 代表)
大野博則 (OONO FARM 農家)
小林清司 (五十嵐酒造株式会社 杜氏)
大畑健雄 (俺たちの炙り家、3Ⅼight Café、株式会社TKOファミリー 代表)
今回は狭山奥富村地酒会のメンバー4人を迎えての講座でした。米作りの大野さん、酒造りの小林さん、酒販売の田口さん、付加価値を付けて消費者に提供する大畑さん、それぞれの分野のプロフェッショナル4人に、「里平」に対する思いを語っていただきました。
「里平」とは … 田口博章さん
「『奥富村里平』は地域活性化を目指して誕生した」と話し始めた田口さん。人口減少、後継者不足、店舗の閉店や減少、顧客の高齢化……、新狭山北口商店会も様々な悩みをかかえていました。こんな地元を盛り上げるためには、多くの人を呼ぶことが大切です。「すかいロード祭り」では2万人の来場がありましたが、年間の集客にはつながりません。奥富・梅宮神社の「甘酒まつり」の時に「すかいロード冬祭り」を開催しましたが、それも単発の事業です。
そこで、「年間を通じて集客するには観光が必要」「自分たちには何が出来るだろうか」と4人は考えました。酒屋、居酒屋が考えついたのは、日本酒でした。奥富の田んぼの持ち主、狭山市在住の杜氏も揃っています。しかも、奥富の氏神、梅宮神社はお酒の神様です。こうして、とことん狭山にこだわった純米酒「奥富村 里平」が誕生しました。
2年目には、米作りに関わる人を増やすことで「里平」に愛着を持つ人を増やせると、田植え、稲刈り、酒づくりの体験を企画しました。50名の参加者を募集し、観光につなげようとしています。
お米について … 大野博則さん
奥富の田圃は昭和63年に圃場整備が行われ、稲作の効率化がなされ、現在のような田の形になりました。当時遊んだ小川の「想い川」という地名は今でも残り、たくさんいた野生の蛍は、至誠病院近くの弁天堀で毎年5月には放流が行われます。この辺りの米は、昔は川越の大手米屋に出荷していました。特に入間川沿いの水富、奥富、川越山田地区の米は味が良いと高価に取り引きされていたそうです。
奥富で栽培されるコメの品種は、昔は「日本晴れ」「アサノヒカリ」「キヌヒカリ」「コシヒカリ」などでしたが、今は県の推奨品種である「彩のかがやき」「彩のきずな」や「コシヒカリ」などが多くなっています。「里平」では、初年度は「彩のかがやき」、2年目は酒米の「さけ武蔵」、3年目の今年は「彩のきずな」を使用しています。酒造りに使うコメは毎年違っていますが、杜氏がそれに合った仕込みをすることで、毎年違う味の酒ができています。今年は夜間も気温が下がらず、高温障害の不安を感じていましたが、思いのほか良くできていました。地元産のお米を是非食べてみてください。
お酒について … 小林清司さん
皆で力を合わせ一つのものを作っていく酒造り、そして、目に見えない酵母菌の自然の営みでできる酒造りの魅力にとりつかれて杜氏になり21年目。「里平」の名は、とても素敵だと思います。大野君のおじいちゃんの名前で、お酒が出来た時すごく喜んでくれました。こうして人と人がつながっていきます。お酒は人と人とのつながりの道具だと思っています。
1年目は彩のかがやきで造りましたが、それまで、一般米のみで酒造りをした経験はありませんでした。一般米は酒米に比べて澱粉含有量が少ないので、あっさりした味になってしまいます。そこで、麹を多めにし、力強い味になるようにしました。2年目はさけ武蔵を使いましたが、精米歩合60%にしました。精米歩合は食用米では90%ほどですが、日本酒では70%以下、大吟醸などでは50%を切ります。米の表層部分にはタンパク質等の栄養分があり、これらが多過ぎると雑味として残ってしまいます。さけ武蔵から作った日本酒は、柔らかい味わいに仕上がりました。
「里平」の現在と未来 … 大畑健雄さん
富山から都内に出て来て、狭山ではじめて人の温かみを感じ、新狭山で独立することを決意しました。こうした中、人との出会いで生まれた「里平」。これまで、田植え体験、酒蔵見学、美酒鍋講習会等々、いろいろな取り組みを行ってきました。
現代社会はネットで多くの人がつながり、地域コミュニティー(商店街)はあまり求められていないように思います。そんな中、里平で繋がりを作っていかなければならないと感じています。里平を販売することではなく、里平を通じて何ができるかが大事です。里平という商品を使い、新狭山に人を呼び込みたい。人がどんどん繋がっていくようなコミュニティーを作っていければ……と思っています。
今後は、体験型講座を中心にすえしながら、ワークショップ、ツアー企画、梅酒や果実酒など里平を使用した商品の開発などを考えています。里平を通じて人が繋がり、商店街の希望の光になれればと思っています。
質問
◆ 毎年米を変えているのはなぜですか?
→どんなお酒が出来るのだろうと楽しんでいる面もあり、味を求めて研究している面もあります。
◆ 国の農商工連携そのものだと思いますが、補助金とかを使っていますか?
→今は自分たちの利益から運営費を出しています。もっと大きく展開するとなると補助金等も考えなくてはならないと思います。
◆ 酒蔵体験が入っていましたが、普通入れないのではないですか?
→小さい蔵なので見学希望があれば、できる範囲で受け入れています。
◆ 里平の在庫はありますか?
→今年はいろいろな種類があります。炙り家では全部飲めます。
最後に「狭山の案内人に新狭山地区を案内してほしい」との要望も出されました。熱い4人の若者の話にあっという間の2時間が過ぎてしまいました。「こんな若者がいるんだもの、狭山の未来は明るい……」そう感じた本日の講座でした。