入間川のお宝ガイドの戦略
~入間川を観光資源にするためのプロデュース手法~
日時:2019年5月22日(水)13:30~15:30
場所:狭山元気プラザ大会議室
講師:元西武文理大学サービス経営学部教授 安田亘宏
観光資源とはそもそも何か。そんな話から今回の講義が始まりました。入間川の魅力をきちんと捉えないと魅力は引き出せません。どうしたら、魅力を創り出せるのかを考えていきます。
観光資源とは?
人は何かを見て感動したい、新しい何かをやりたいとき、旅に出ます。そういう観光行動を誘発する「モノ」や「コト」が観光資源です。日本の観光対象は、「自然」「歴史的文化遺産」「温泉」と言われてきました。江戸時代から神社仏閣参り、温泉旅が行われてきましたが、明治以降はそれに加えて山岳などの自然も観光の対象になりました。現代では観光目的も多様化し、アミューズメントパークや、汽車に乗るコト自体、漫画や映画の聖地を訪ねるコトなども観光の対象となってきています。
「うちのまちには観光資源なんかない」という話を良く耳にします。そんなことはありません。どんな地域にも、観光資源という宝はあるのです。それを探すには、地元の人が誇り、自慢する身近なものから発掘します。それに手を加えることで新しい観光資源になります。地元の素材やノウハウから、新たに観光資源を創り出すのです。「外部からの目」を持つことで新発見、再発見することもあるでしょう。複数の観光資源のマッチングを考えることも時に必要でしょう。そんな、宝探しの例をいくつかご紹介します。
【岩手県二戸市の薬膳雑穀料理】
92年からまちづくり活動を始めた二戸市。市民総参加による地域の宝探しから見つかった答えは「雑穀」でした。世界保健機関(WHO)の胃がん発生の少ない地域として調査対象になり、貧乏の象徴であった雑穀が健康食であることが分かりました。プロジェクトが開始され、次々に雑穀特産品が誕生し、今ではこの雑穀を核に、自然、歴史、文化、暮らしなどをテーマにしたエコツーリズムの取り組みが行われています。
【愛知県日間賀島の蛸とフグ】
1周5.5kmの小さな島ですが、観光客は愛知県の島の中でナンバーワンです。特産品の「蛸」と「トラフグ」から観光資源を生み出しました。出荷していたフグを島内の観光資源にするため、フグ料理の資格取得を促進し、現在約60軒で食すことができます。名鉄の「ふぐづくしプラン」によって、年間30万人が訪れ、今では「多幸(たこ)の島」、「福(ふぐ)の島」として親しまれています。
【茨城県真壁町のひなまつり】
90年代、石材業の衰退から、「何もないまち」になった真壁町。見世倉・土蔵などが軒を連ねるこのまちで、「来てくれた人をもてなそう」と有志40人によって始められた雛飾りの輪が広がり、今では約160軒が参加する名物イベントへと発展しました。雛飾りで人々の目を楽しませてくれるだけでなく、お茶や甘酒を振る舞ってくれたり、昔語りを聞かせてくれたり……。心づくしのおもてなしで迎えてくれます。
「入間川」という観光資源
ここで、「川に行ったら何をしますか?」という質問が出されました。受講生からは、散歩、景色を眺める、水泳、キャンプ等々、30以上の答えが出されました。
続いて、「川」という観光資源の特徴についてのお話がありました。観光資源には「点(法隆寺等)」「線(街道等)」「面(富士山等)」がありますが、川は「線」なので、その特徴を生かすことが必要です。例えば、「流れていること」から、川下りやリバークルーズ、カヌー、ラフティング、灯籠流し等が考えられます。水辺がある、橋がある、歴史がある、産業がある、季節により変化する……いろいろな視点から考えてみることができます。
数年前に国土交通省により河川敷の占用に対する規制緩和がなされました。それ以来、地域の顔、そして誇りとなる水辺空間の形成を目指す「かわまちづくり」が、全国140カ所以上で行われています。また、水辺に新しい活用の可能性を創造していくプロジェクト「ミズベリング(MIZBERING)」の取り組みも全国に広がりつつあります。入間川でも親水空間の有効活用を目指した「入間川とことん活用プロジェクト」の話し合いが進められています。
入間川をプロデュースする!
さて、いよいよ入間川プロデュース論です。プロデュースとは、計画段階から終了に至るまで、そのプロジェクトの進行管理を一貫して総合的に統括することです。「あなたは、かわまちづくりプロデューサーです。入間川を観光資源にするために何をしますか?バスに乗って関越を下り、ここまで来てもらえる短期イベントでないプロジェクトを考えてください」の問いかけに、受講生からは、「川沿いの歴史物(石仏など)を訪ね歩く」「入間川の良さを市外の人にアピールするためオープンカフェ等を作り、歩いてもらう」「季節毎に撮影会を開く」等々の案が出されましたが、講師からは、「できそうではプロデュースのし甲斐がない。最初の企画はもっと大胆に。私がやらなきゃ出来ないぐらいのものを」とのお話がありました。経験に頼らず、出来そうもないものを発想する、プロデュースもそうでないと面白くない、と……。皆さんだからできること、この市民大学だからできるものを考えて下さいと続きます。受講生は、「かわまちづくり」に背中どころか、体全体を押されました。
JTBにお勤めの時、鬼怒川の流れの聞こえる最上の部屋をお客様に提供し、「水音で眠れなかったよ」と言われた話などを所々に織り込みながらの楽しい講義でした。入間川を見る新しい視点を与えていただきました。