さやま市民大学学長 市民大学サミット・パネルディスカッション コーディネーター 小山周三
初めての「市民大学サミット」の開催
さやま市民大学発足5周年の記念事業として、去る1月23日(水)、「市民大学サミットin狭山」を開催しました。約半年前から計画に入り、最終的に私たちを含め5市民大学参加による市民大学サミット開催の運びとなりました。
5つの市民大学の参加協力が得られれば、サミットの名前を使っても良いのではないかというお墨付きを、生涯学習と市民大学研究に長く関われてきた瀬沼克彰先生(桜美林大学名誉教授)から頂きましたので「市民大学サミット」という名称を使わせて貰うことになりました。日本で初めての市民大学サミットと呼べる、意味ある、内容の濃いサミットが開催できたと思います。当日は約130名の一般市民並びに市民大学運営関係者のご参加を頂くことが出来ました。
参加5大学が決まる経緯
今回の市民大学サミットへの参加は、行田市民大学(行田市)、きらめき市民大学(東松山市)、久喜市市民大学(久喜市)、市民大学ふじみ野(ふじみ野市)、さやま市民大学(狭山市)の5市民大学となりました。
結果的には、埼玉県内の市民大学同士の協力によるサミット開催になりました。多分、埼玉県内での初めての市民大学サミットを開催することができました。
市民大学という名称を使わなくても、生涯学習センター、市民カレッジ、市民塾などの名称で活動する、事実上の市民大学活動は全国の各都市で行われています。今回は初めてのサミット開催になることを意識して、市民大学という名称を使用している活動団体に絞って参加へのご協力を呼びかけさせて頂きました。
今回ご参加頂いた、きらめき市民大学、久喜市市民大学、市民大学ふじみ野の3市民大学とは、私たちのさやま市民大学とはすでに交流を通じたご縁がありました。研修視察の依頼、逆に視察を受け入れるなどの交流が始まっておりました。行田市民大学とは今回が初めての交流になりました。市民大学同士が交流し、学び合うことの大切さを経験しておりましたので、このような経験が、私たちの5周年記念事業の柱に、市民大学サミットを開催しようといる動機に結び付いたように思います。
市民大学同士の交流と連携の必要性
サミットの開催に至ったもう一つの背景があります。市民大学という名称を付けていても、生まれも、育ちも、そして運営の方法などがそれぞれ違っていて当然だと思います。市民大学とはこういう学びの場であるという標準があるわけではありません。実際に、私たちのさやま市民大学も、毎年、試行錯誤を繰り返しながら、私たち独自の市民大学らしさを求め続けて今日に至っています。
しかしながら、市民大学という名前を付けて活動している以上は、目指している大きな方向に関しては何らかの共通性があるのではないか、また、市民大学の運営上の悩みは個別的にあるにしても、解決に役立つ示唆も得られるのではないか、市民大学同士の連携と協働によって、市民大学の質の向上につなげていけることがあるのではないか、人生100年時代における市民大学の新たな役割の発見ができるのではないか、などの想いを抱きながら、初めての市民大学サミットの開催に辿りつきました。
サミットの開催テーマの設定
市民大学サミットの開催テーマを何にするかは少々悩みましたが、最終的には、「市民大学の学び、社会貢献、生きがい発見」に決まりました。やや無難なテーマに落ち着きました。
市民大学で何を学び、地域社会にどう活かすか、生きがいの発見と社会貢献による自己充実など、人生100年時代における新たな生き方を考える場として、かつ、地域課題の発見とその解決が担える地域力、市民力の育成などが市民大学としての共通の取り組み課題があるのではないかを想定した結果、上記のテーマになりました。
副題として、~あなたは何を学び、どう活かしますか~をつけました。市民大学の在り方を運営する側から見るのではなく、学ぶ側、学習する側、すなわち市民の立場からから市民大学を考えるサミットにしたいと考えたからです。パネリストの皆さんは、市民大学の運営・企画に直接的に関わる方々ですが、聞き手である参加者の大半は学びの受益者であるとみなして、学ぶ立場からの市民大学のあり方をめぐる話し合いにしたいと考えました。そこで、パネルディスカッションに入る前に、基調講演の時間を設け、桜美林大学名誉教授の瀬沼克彰先生に「あなたは学びの成果をどのように活かしますか」のテーマでご講演をお願いすることになりました。
参加パネリストの特徴
初の市民大学サミットの開催にあたり、以下の5人のパネリストの参加が最終的に決まりました。市民大学によっては市長が学長を務めるというケースもありますが、今回は、市民大学の実質的な運営責任者によるサミットにしようと考え、事実上、市民大学を代表できる立場の方々にご協力をお願いいたしました。
行政の立場からお二人、NPO法人の立場から3人のパネリストにご参加頂きました。
①行田市民大学(行田市) NPO法人行田市民大学活動センター理事長 今村武蔵様
②きらめき市民大学(東松山市) 東松山市教育部社会教育課 矢部良明様
③久喜市市民大学(久喜市) 久喜市教育委員会教育部生涯学習課 布施昌美様
④市民大学ふじみ野(ふじみ野) NPO法人ふじみ野みらい代表理事 水谷俊彦様
⑤さやま市民大学(狭山市) NPO法人さやま協働ネット理事・運営委員長 髙橋和子様
各市民大学の状況を知るうえで、以上の5人の方々のご参加とご発言が得られたことで、市民大学サミットの開催の目的が達成されたように感じました。
基調講演をお願いしました瀬沼先生にアドバイザー役に入って頂き、さやま市民大学学長の私がコーディネーター役を務める形でサミットの進行が行なわれました。
討論を通じて感じたこと、得られたこと
5人のパネリストの方々が話されたそれぞれの市民大学の概況は、さやま市民大学のホームぺージ(2019年2月5日付け)にて掲載しましたので、本稿では割愛させていただきます。⇒ さやま市民大学設立5周年記念「市民大学サミット㏌狭山」
スケジュールが押せ押せになり、予定より短い時間でのご発言時間になってしまい、申し訳無かったのですが、事前に用意周到な準備をされておられた結果、市民大学を互いに理解し合う十分な情報提供をしていただいたという印象を受けました。「特色を生かした市民大学の運営が行われている様子がよく伝わった」、「市民大学らしい話が聞けて大変よかった」という一般参加者の評価を頂きました。
市民大学サミットの企画者として、そして当日のコーディネーターとして、サミット開催を通じて得た感想を述べ、サミット開催の統括といたしたいと思います。
第一点は、今回参加の市民大学の運営形態は、「公設公営」、「公設民営」、「民設民営」の3つのタイプに分かれておりましたが、「市民による市民のための市民大学」という目標は共通化されていたと思います。組織と運営形態の違いがあっても、目指すべき市民の学びの場に関しては大きな違いは無かったと感じました。
第二点は、私たちのさやま市民大学は、講座毎に募集定員を決め、開講の有無を決めていますが、年度の募集定員の総枠を決めて募集し、入学後に一般教養的な科目および専門的な科目を選択受講し、グループ成果発表に向けての活動に入っていくタイプの市民大学活動があることを知りました。まちづくりとその実践を意識した市民大学の場合には、有効な考え方ではないかと思います。
第三点は、学びの成果の地域還元が各市民大学の共通課題になっておりますが、成果発表会への参加を他の市民大学にも呼びかけたらどうかという提案がありました。成果のとりまとめ、並びに発表に向けてのモチベーションを高める効果が期待できると思います。市民大学同士の連携の在り方として、参考にしたいと思いました。市民大学の学びが内向きになる傾向があります。お互いに学び合い、発表し合う風土をつくることが、市民大学の質を高めることにつながると思います。
第四点は、市民大学がそれぞれ地域の正規の大学と連携し、講座の開設や運営面での協力が進んでいることが報告されました。大学と市民大学が連携することにより、地域づくりそのものにどのような具体的展開が可能になるのかなど、大学との連携とその成果の生み出し方などをしっかり議論する必要があるように感じました。今後の市民大学サミットの検討課題として考慮したいテーマではないかと思います。
第五点は、このような市民大学サミットを今回だけで終わらせてはもったいないと思います。参加市民大学の持ち回りで開催することを提案いたします。主催者にとっては、重要なイベント事業になりますので、事業予算の確保など、年度事業計画に組み込む必要があります。次回開催に向けての手があがることを期待いたします。
次の開催に向けて、今回のサミット開催の経緯と総括が参考になるのではないかと考え、第一回市民大学サミットの開催総括とさせて頂きたいと思います。
(終わり)