〈新たな「生き方革命」が問われている〉
「人生80年時代」から「人生100年時代」への転換が叫ばれている。人間の寿命が20年延びるという単純な話ではない。人間の生き方そのものが根本的に変わる、あるいは変える必要のある「生き方革命」が問われている。65才以上を高齢者と規定した定義は意味を失いつつある。75歳以上を後期高齢者と規定し、諸々の社会保障システムを構築してきた「人生80年時代」の社会システムでは持続可能社会は築けそうにない。昨年、政府内に「人生100年時代の構想会議」が設置され、国の政策課題として取り上げられている。「定年延長」も大事だが、「生きがい就労」など地域貢献型の生きがい就労のあり方なども視野に入れて考える必要がある。
〈「老後人生」では済まされない時代〉
現在、私たちの市民大学の受講生の平均年齢は約66歳です。年齢別にみてみると、60歳代が27%、70歳代が31%で、全体の約60%が60歳代以上の受講生という構成になっている。学びの目標を持って集う受講生たちの日々の元気な姿はとても「老後人生」には見えない。「人生80年時代」のライフデザインの中で「定年人生」を迎え、住まいのある狭山に戻ってきた男性達の多くは、地域コミュニティの中に新たな居場所を見出す必要性にせまられている。「キョウヨウ」と「キョウイク」のない生活(用事や出かけて行く場所、会える人がいない生活など)は絶え難い。単なるセカンドライフ論ではなく、「第二の人生の本当の生き方探し」のための学びの場が要求されている。
〈団塊の世代は「第二の生きがい探し世代」〉
肉体的にも精神的にも、10~20歳以上若く見える現在の60~70歳世代はもはや「老後世代」ではない。「第二の生きがい探し世代」と呼びたい。平均寿命がすでに83歳(男女平均)にまで伸びた現代の高齢者には「余生」」や「老後」の概念は似つかわしくない。人生100年時代のライフデザインそのものを描き、生きていて良かったというハッピーライフを持続させるための「生涯現役」の社会システムを考えねばならない。生きがいとしての働く場を地域に創りだし、地域福祉と地域雇用をセットで考える循環型福祉社会などのコミュニティ再生構築なども視野に入れる必要がある。
〈ライフデザインを進める場合の5つのエンジン〉
「人生100年時代」のライフデザインを考える場合には、次の5つの寿命を延ばす具体的な政策と実践が必要になる。
「生涯現役社会」や「生涯いきがい社会」を実現するためには、まずは①「健康寿命」を伸ばす政策が必要である。「健康であることが社会貢献」といわれている、健康価値優位の考え方をさらに推し進める必要がある。次に,生きがい就労の機会を創り出す②「就業寿命」を延ばす取り組みに着手する必要がある。体力と能力のある人が自分の意志で働ける普通の就労だけでなく、生きがいにつながる就労・雇用を創出する仕組みも重要だ。長寿社会のもとでは年金頼りの生活では不安定・不十分である。土地建物を含めた資産運用によって生計費を増やす③「資産寿命」を伸ばす工夫と仕組みも大切だ。以上の3つは、社会福祉問題に詳しい、清家篤先生〈慶應義塾大学教授〉の提言を参考にした。加えて、生きがい発見のための④「学習寿命」も継続して延ばす必要がある。これは、市民大学の運営に関わる自分の経験からの意見である。生きがい発見のための学習の場が必須条件になる。さらには、他者との関わりから得られる喜びの源になる⑤「地域貢献寿命」なども増やす必要も出てくる。
以上の5つの寿命伸長策は相互に結び合う関係にある。
〈必要性増す市民大学の学習の場〉
「もう年だから無理」ではなく、「年を重ね、経験を積んだからこそ出来るやりがい・生きがいの発見」という「生涯現役社会」の実現を目標に置きたい。人間としての人生が全うできる生き方の再設計(リ・ライフデザイン)が問われ出している今、地域学習を通じて地域課題の発見と課題解決の担い手づくりに取り組んできた、さやま市民大学の新たな挑戦課題でもある。人生100年時代のライフデザインの問いかけの中に、地域に密着した市民大学の役割と立ち位置が見えてくる。「市民個人が輝けるライフデザイン」と「住み続けられるまちづくりに関わるコミュニティデザイン」の二つを柱にした人材育成の場の重要性がいっそう高まってくると感じている。
さやま市民大学News座談会にて
(平成30年7月27日)