『語り継ぎたい狭山の魅力』の第6巻が完成しました。本巻の中にも、前巻(第1巻~第5巻)までと同様、狭山を知るための魅力的な「地域ふるさと論」がたっぷりと収録されています。
太古の遺跡から想像できる狭山の歴史とロマン(橋本壮一氏)、民話と方言に込められる狭山の魅力(今坂柳二氏)平安時代から受け継がれている梅宮神社の甘酒祭り(梅田久詞氏)、入曽を中心にした集落の屋号や地名に見る地域共同体の様相(権田恒夫氏、仲川幸成氏)、工業団地から見える狭山のモノづくり力(石田喬氏)、狭山の平地林環境保全のために活躍する市民ボランティア活動(小川泰夫氏)、統計・メディアに潜む狭山の魅力度(木下修氏)、いずれの章も狭山地域ふるさと学講座から生まれた貴重な価値情報に高められています。講座講師を務めていただき、かつ執筆者としての労をとっていただいた8名の講演者の方々に感謝と御礼を申し上げます。
じつは、この6巻がシリーズとして発刊してきた『語り継ぎたい狭山の魅力』の最終号になることをお伝えしておかねばなりません。第1巻から愛読してくださっている読者の皆さんには心より感謝申し上げます。最後の巻になりましたので、本シリーズ発刊の経緯について簡単に触れさせていただきます。
さやま市民大学が「狭山地域ふるさと学講座」を平成27年に新規講座として立ち上げました。以来、早くも三年が経ちました。開講当初から、三年間は開講し続ける、三年間の期間限定の講座にする、講義録を冊子にする、という方針のもとで講座の企画・運営が行なわれてきました。
お陰様で、この三年間は大変充実した市民大学講座として定着しました。熱意溢れる地元講師陣にも恵まれ、また狭山ファンともいえる熱心な受講生にも支えられ、人気講座の一つに成長しました。講義内容を記録に残す計画を最初から立てていました。一回一回の講義録を丁寧に文字化、文章化し、今号を含めて計六冊の「狭山ふるさと学講座シリーズ」を刊行することができました。
本講座の開講により、狭山という土地にまつわる歴史、文化、祭り、自然、産業などを広く、深く知ることができ、さらに未来に語り継ぐうえで、貴重な記録として残す大役も果たすことができました。
「ふるさと学とは何か」。「地域学とはどう違うのか」。「郷土学」や「歴史講座」とどこが違うのか。講座開設にあたっては様々な意見や疑問が出ました。
私自身は「狭山ふるさと学」で良いと思っていましたが、地域学の方が適切ではないかという意見もあり、妥協して「狭山地域ふるさと学講座」に同意した経緯などもありました。
「狭山のことが良く分かり」、「まちへの愛着が生まれる」ための講座にしたいという想いから開講しました。「地元愛」、「郷土愛」、「ふるさと愛」を育むことにつながる講座にしたいという想いで努力してきたつもりです。
狭山市は市制施行後60年が経過しています。人間の年回りで言えば還暦を超えました。東京近郊のベットタウンとして流入人口が増え、人口15万を越える立派な都市に成長しました。狭山で生まれ、育ち、学び、結婚し、狭山市内外で家族を形成している人々にとっては、「狭山がふるさとでなければならない新しい世代」も多く現出しています。
「狭山ってどのようなまちなのか」「狭山というまちの魅力は何か」を次の世代に語り継ぐ義務と責任が、狭山に暮らす大人たちにあります。地域学や郷土学の枠に捕われずに、「ふるさと学」という表現にこだわった理由がこの辺にありました。歴史、人物、自然、産業、文化などの多面的視点から、語り継ぎたい狭山の魅力を掘り起こしてみようという想いが三年間の講座企画の中心に強く刷り込められてきました。
学びの中身は、すべての講義内容が丁寧に採録し、6巻にわたって冊子化することができました。講義録を原稿化し、書籍化する作業のすべてが本講座の受講生・修了生の手により行われてきたことも、記しておきたいと思います。講座リーダーの川口彰久氏が全体を統括し、権田恒夫氏、児玉護郎氏、石川隆氏の3名が原稿化を担わってくれました。髙橋徳子氏にも編集スタッフに参加していただき、オール市民大学のメンバーによって、価値ある、貴重な作品としての出版物を世に送り出すことができました。
現役時代に出版編集のプロとして活躍してきた、私の友人、木下修氏が全体編集責任者として、テープ起こしの手ほどきから原稿整理、校正、制作進行の全てを監督・監修の任を引き受けてくれました。氏の支援のお陰で、1~6巻のシリーズ刊行が完成できたことに、感謝と御礼を申し述べておきます。
本書は、狭山を知るための「愛着の種」かも知れません。この種を育て、花を咲かせ、物語化して、本当の「ふるさと愛」、「郷土愛」、「狭山のシビックプライド」にまで育て上げねばなりません。「良きふるさと」として「いつまでも住み続けたいまち・狭山」に発展させていくための礎に、シリーズ刊行の『語り継ぎたい狭山の魅力』」がなってくれることを願っております。