開催日時: 平成28年11月8日(金) 13:30-15:30
場 所: 大会議室(元気プラザ)
受講生 : 受講生11名 出席者:8名 欠席者3名 オブザーバー 1名
第4回講座テーマ:~ 東京大学高齢社会研究機構 専門職員 木村清一氏 ~
・都市における長寿社会のまちづくり
・豊四季団地の再生事業とソーシャルビジネスの役割
・高齢者の生きがい就労に取り組むプロジェクトの実践
第1 高齢者を取り巻く現状
第2 現代高齢者の姿
第3 高齢者が生きがいをもって活躍できるまちづくり
第4 新たな「役立ちがい」を創る取組
について予定時間を超えて熱心な講演が行われた。
1.柏市の高齢化率の変化
2010年 全国23.0% 柏市 19.9%
2030年 全国31.6% 柏市 26.7%
75歳以上の人口割合の変化
2010年 全国11.1% 柏市 7.9%
2030年 全国19.5% 柏市16.9%
第1.
1.柏市の高齢化率は、つくばエキスプレスの開通により都心への通勤が短縮、柏市の分譲マンション価格は3000万円台と割安感があり、東京から30代の夫婦が柏市に移住したため、高齢者も増えているが若者も増加し高齢化率が緩やかとなった。
2.会社を定年退職し、毎年4000人以上が地域に帰ってきている。団塊の世代の多くは地域とのつながりが薄いため自治会等の既存の場所・活動は敷居が高く、サラリーマン時代の上から目線での対応のため、やることがない、行くところがない、会いたい人がいない、とこのままでは自宅に引きこもってしまう可能性が大である。
3.暮らしの中で広がる、孤立・孤独・閉じこもり、子育て不安、・虐待などから、悲劇が生まれている。今高齢社会にふさわしい”まちづくり”が求められている。市民の誰もが住み慣れた日常生活圏域で新しい老い方と暮らし方のシステムが必要とされている。
第2:柏プロジェクトとは何か
2010年5月13日:「高齢社会の安心で豊かな暮らし方やまちのあり方」を三者(柏市、東京大学、UR都市機構)で議論し、実践していくために三者協定を結びWGが設置された。
・平成22年5月から5か年の連携事項:
1.在宅医療の推進、2.在宅医療を担う医療・介護の育成、3.生きがい就労・いきがい支援、4.生涯学習、5.高齢者等の住宅、6.移動手段、7.その他、必要と認める事項
・平成27年5月から3カ年連携事項:
前5か年計画に、7.生活支援サービス、8.健康づくり・介護予防が追加された。
プラン1.地域包括ケアシステムの実現
① 在宅医療を推進するシステムの構築
② 訪問介護の充実(24時間訪問介護の体制整備)
③ 介護サービスの充実
④ 高齢者ケア付き住宅の整備。(旧団地の建て替え)
プラン2.高齢者の生きがい就労を実現する
① 休耕地農業、ミニ野菜工場、屋上農園
② 保育・子育て支援の向上、子供の居場所の確保
③ 生活支援サービス
④ 高齢者の福祉サービス
⑤ コミュニティ食堂や配食の実施で地域の食を支えるサービス
究極のテーマ(7項目)
・ 高齢者の力をまちづくりに生かす
・「働く」+「生きがい」=生きがい就労
・「やりがい」+「役立ち」=役立ちがい
1.新たなライフスタイルを創る
2.人と人を結び行ける役割を果たす
3.ニュー・コミュニティの創造
4.セカンドライフを豊かにする活動
5.無理なく、楽しく、できる範囲
6.自分の役割や立場ができる
7.地域や社会に貢献できる
市民と行政が一緒になって考え、取り組むこととした。
・高齢者向け「就労セミナーの開催」
1. 就労セミナーの受講生募集
2. 就労セミナーの実施
3. 心身機能の検査,東京大学で実施 健康チェック、個別認知機能検査
4. 事業別就労体験・見学会
5. 事業者による面接・業務の適正、就労内容の適正
6. 事業者による研修、ワークシェアリング、ジョブコーチ
7. 就労・高齢者と事業者との雇用計画、ワークシェアリング
・高齢者に対する就労効果の測定
就労前検査、6ヵ月後,1年後検査を行う。検査項目は、集団検査、個別認知度検査、健康チェックセンターで行う。
検査結果:就労高齢者が多いところは医療費が減少。うつ状態が減少。
・高齢者就労の取組で得られた教訓
1. 高齢者の持つ技術や能力は高く、地域のコミュニティ向上に大きな役割を果たす可能性があること
2. 多くの高齢者は、フルタイムより短時間・隔月勤務を望んでいる
3. 就労形態としては、ワークシェアリングの実施により新たな就労環境を生み出す可能性があること
4. 若い人たちとのコラボレーションが新たな職場文化を創り出す
5. 就労は健康寿命を延ばす
これからの取組
1. セカンドライフの支援システム
65歳で定年となったら、培ってきた経験・能力を生かせる形で活躍する、貢献することが当たり前の社会を構築すべき。そのための体制整備が必要である。
2. 就労セミナー修了者による社団設立。柏市シルバー人材センター
3. セカンドライフ・プラットホームの設置。
4. 市から事業の受託をする。
5. セカンドライフ応援セミナーの実施
6. 生涯現役促進地域連携事業「柏」モデル、厚労省より補助金
7. 高齢者のニーズにあった就業支援事業
8. 高齢者ニーズによる新規及び重点就業分野の開拓
重点分野:農業、子育て、介護、生活支援、中小零細企業の専門的支援
9. 高齢者が障がい者団体で就労する
10. そして「ソーシャルビジネス研究会」と「就労企画室」を立ち上げて取り組む。毎月1回定例会議を持つ
11. 就業企画室の役割と今後の取り組み
今後の事業展開
① 営業のスタンスを短期、中期、長期に分けて展開する
② 商品販売については、今後は専門組織として販売チームの分離を行う
③ 新製品開発、新規事業も含めて企画室の充実を図る
12.市町村が取り組始めた事業
介護予防・日常生活(新しい総合事業)-地域包括ケアシステムの核となるー
進化する取組・柏市豊四季団地高齢社会総合研究会は、第1フエーズ(2010~2015)から第2フエーズ(2015~2018)へ進行中
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
受講生の感想
・柏市において地域包括ケアシステムを実現するまでには相当に心労があったことと思われますが先駆者に敬意を表したい。
・狭山市においても実現可能なものから実行していければと思う。
・元気な高齢を目指す「私」づくりになお一層やりがい⁺役立ち=役立ちがいの生き方を求めていこうと思う。
・プラン2、役立ちがいは素晴らしい考え方です。在宅医療システム・新しいネットワークの考え方、組織図、各事業の取組と成果は素晴らしいよく考えられたシステムだと思います。
講座リーダーの感想 江頭誠治
高齢者の置かれている現状をつぶさに、何が問題点かを細部にわたって分析し、近未来においてどういう状態におかれるかを想定し、その問題点を統計学的にも、医学的な観点、生きがい就労による高齢者の活動を分析したうえで諸事業に取り組み、その成果を出していく、システムづくり、すなわち東京大学、柏市、UR機構三者のコラボによる演出が見事に結実したモデルケースとして感動を覚えた。地域包括ケアーシステムを実現するための各事業を取りまとめ、協力体制を作り上げる組織作りは、医師会をはじめとして訪問看護師、ヘルパー、ケアマネ、栄養士、薬剤師の協力とこれらをコーディネートする地域医療拠点の整備を行う事業の立ち上げによって実現している。これらの諸事業にゼロの段階から参加され、現在の組織まで作り上げられた木村清一氏に心からの敬意を表したいと思います。