産業カウンセラーの全国研究大会で講演しました
5月28日に、大宮ソニックシティ大ホールにて「2016産業カウンセリング全国研究大会in北関東」(一般社団法人 日本産業カウンセラー協会主催)が開かれ、その特別講演の講師を務めました。約1800人の参加者が大ホールを埋め尽くす中での講演でしたので、いつもと違う緊張感を味わいました。
私の講演の前に有名な姜尚中先生(東京大学名誉教授、『悩む力』の著者)が「働くこと、つながること」をテーマに基調講演され、その後、私が「人づくり、まちづくり、元気づくり~人が育つ瞬間を如何にデザインするか」をテーマに講演しました。
働く人と組織を支えるための認定資格を持つ「産業カウンセラー」が全国で約3万人登録されています。職場における対人関係の悩みなどの解決に助言される産業カウンセリングの役割が年々高まってきており、年に一度の全国研究大会に集まられた大勢の参加者の熱気が伝わってきました。人や組織に関する悩みの解決相談に対応する「カウンセリング」と「カウンセラー」の役割の重要性を実感しました。
人が変わる「真実の瞬間」をどのよう創り出すか
人が抱える悩みごとのほとんどが「対人関係の悩み」から起こっている(アドラー心理学)と言われます。その根本原因をよく聞いてあげる「傾聴」という行為が、悩みの解消につながることはご存知だと思いますが、聞くだけでなく、相手の気持ちを楽にして差し上げる、あるいは悩み事が晴れる決定的瞬間を上手く創り出すことが出来るかどうかは、専門的なカウンセラーの仕事の領域になってきます。
「地域カウンセリング」という言葉あるかどうか分かりませんが、地域活動や市民活動の中にも対人関係の悩みがあり、円滑な活動の大きな妨げになっていることは確かです。カウンセリングという視点から、関わり合う人づくりを根本的に考え直してみることが重要ではないでしょうか。
私は西武文理大学でサービス経営学講座を担当し、学生たちに対人関係を良くするための「ホスピタリティ学」を教えてきました。相手に好印象を与えるための「真実の瞬間(決定的瞬間)のデザイン」などを教えてきましたが、自分が変わる、あるいは人が変わる際の決定的瞬間をどのように創り出すかの課題に関心を持ち続けています。好意を創り出すためのホスピタリティ・マインドに「スイッチ」が入った学生が、他者貢献や社会貢献が自分の生きがいにつながることを体感し、立派に育っていく姿を見届けてきました。
さやま市民大学の人づくりと志民づくりに共感をもらいました
前述の大会では、さやま市民大学が取り組んでいる「人づくり=志民づくり」を中心に話をしました。自分自身の充実した生きがいのために、「協働のまちづくり」という実践の場を活かして、他者貢献や社会貢献という生きがいを学ぶ、私たちの市民大学の理念と方向性が、産業カウンセラーの方々に伝わり、共感が得られれば嬉しいです。
姜尚中先生も今回の講演で、豊かなコミュニティづくりに欠かせない「人と人とのつながり」は今後の大切な「社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)」であると言及されました。私たちの市民大学は人づくりを通じて社会関係資本を創り出す役割があると自認していますので、姜尚中先生のご高説に勇気づけられました。
たかが市民大学、されど市民大学。なぜ市民大学が必要なのか、市民学とは、志民とは、など、その存在意義を問い続けることの中から新たな役割を発見していくことが大切です。