多発する高齢者の自動車事故
最近、75歳を超えた高齢者ドライバーの交通事故が多発している。自動車は運転を誤れば一瞬にして殺人の凶器に変わる。便利ではあるが、危険な移動手段でもあります。
三千六百九十四人。この数字が何を示していると思いますか?
じつは一年間の交通事故による死者の数です。一日約10人の尊い命が失われているのです。もちろん、高齢者による事故だけではありません。
最近、私の友人知人でも自動車免許証を返納する人が増えたと感じます。高齢者ドライバーの事故多発が返納を促す要因になっているように思います。
免許証返納だけでは根本的解決にならない
日本に車社会が定着して約50年が経ちました。とりわけ郊外都市に住む住民にとっては、自家用車が仕事、買い物、レジャーなどの生活にとって必要不可欠の「生活必需」の移動手段になってきました。いつまでマイカー依存社会が続けられるのか、岐路に立っているように思います。
自家用車がないと買い物に行けない、病院に通えない、趣味の集まりに出かけられないなど、過度の自動車依存社会をつくってきてしまいました。便利な自家用車による移動手段がないと日常生活が成り立たないライフスタイルを変える必要があります。移動難民や買物難民を発生させない移動手段の工夫が要ります。自家用車を使わなくても快適に暮らせる「移動・交通まちづくり(モビリティ社会)」を創り出す社会課題に取り組まなければなりません。
「自家用車ゼロ」のまちづくりの検討
次世代のモビリティの姿として、「自動運転車」の開発と運用が重点施策として取り上げられているが、もう一つの視点、地域特性に合った「新たなモビリティサービス(MaaS;Mobility as a Service)」のあり方も地域課題として取り組むべき大きな問題です。脱自家用車でも快適に暮らせる地域づくりを進める必要があります。
フィンランド(ヘルシンキ市)では、自家用車を2025年までにゼロにするロードマップが示されています。徒歩、自転車、シェアサイクル、レンタカー、カーシェアリング、タクシー、オンデマンド・バスなどの最適な組み合わせで移動手段が確保されるサービス社会構築への取り組みが始まっています。もしも自家用車用の駐車スペースの必要性がなくなるとすれば、新たなまちづくりに供するための空地・空間が創出できるという経済効果も出てくるように思います。
行きたくなる中心街の再生も未解決課題
首都圏内で「住みたいまち」に上位ランクされるのが、横浜、吉祥寺、大宮、浦和、川越などで、繁華街のあるまちの人気度が高まっています。自動車を使わなくても楽しめる、交通便利な繁華街のある住宅地が評価されているようです。
どの都市においても、中心性のある繁華街の存在がまち魅力に不可欠です。わざわざ行きたくなる、過ごしたくなる中心市街地の再生問題も、住み続けたいまち魅力の重要な要素であることを忘れてはなりません。
産・学・行・民の協働による「移動・交通のまちづくり」を地域課題として真剣に議論しなくてはならない時期を迎えているような気がします。