生活者同士の異文化交流をどう実現するか ~ 多文化共生活動の実践例から ~
開催日時 平成29年6月6日 13:30~16:00
場 所 大会議室
受講生 10名 出席者 9名
講 師 公益社団法人国際日本普及協会 AJALT 松尾恭子氏、若本ヴェラスケス・ルシェさん
AJALT(Association for Japanese-Language Teaching )事業の6つの柱
・対象別日本語教育の企画と実施
・教師養成プログラムの企画と実施
・研究調査活動
・地域在住の外国人に対する支援、協力
・広報活動
・教材開発と出版活動
個々の学習者のニーズを分析し、効率的な日本語教育を企画、実施し、個人授業、グループ授業共に提供しています。
対象者は、ビジネス関係者、大使館員、学術研究者、技術研修生、難民、年少者など。又企業、大学、自治体など、内外の諸機関が受け入れる外国人グループに対する日本語特別プログラムを企画し、教育に当たっています。
AJALTの紹介が終わって松尾恭子氏の講演が行われた。
・埼玉県内の在留外国人数。平成27年12月末現在 139,656人 県の人口に占める割合は1.92%、前年比7.4%増
・埼玉県の国籍別在留外国人数、平成27年12月末現在 1.中国 55,716人 2.フィリピン 17,820人、3.韓国15,546人、4.ベトナム 11,221人 5.ブラジル 7,101人 6.ペルー 3,558人
・東京都 462,732人 大阪府 210,148人、愛知県 209,351人、神奈川県 180,069人 埼玉県 139,656人、 日本国全体 2,232,189人の在留外国人数
体験談: 若本ヴェラスケス・ルシェさん〈ペルー生まれ〉が加わり、日本語教育の体験談が語られた。
必要な言葉:安全で安心して日常生活を送るための、必要な言葉。緊急を要する言葉
1、妊娠して発行される母子手帳 胎児から誕生後のケアー事項、予防注射など重要な用件が記載されており、乳児にとっては大事なことが記載されているが、その重要な記載内容について説明がないために、何のために発行されているのかがわからない。
2、入学式→PTA活動。日本の小学校、中学校では留年制度がないため、生徒が皆進級し、卒業する。ペルーでは成績が悪い生徒は留年させて進学をすることができない。そのために年齢を訊ねると、日本では学年で答えるがペルーでは年齢で答える。1学年の生徒がすべて同年齢であることはない。10歳であっても小学校2年生ということがあり得る。
3、病院での対応:痛い・・・痛さの程度の表現。病院での医師からの説明、緊急を要する痛みなのか、そんなに心配をしないでもよい病気なのか、はっきりした説明がない。不安を持つ。
4、学校での部活、推薦(水洗、水仙、)意味の違いについての説明がない。学校で渡される書類が大量にあるのですべてに目を通して理解することが困難。ペルーでは必要なこと、大事なことだけが紙による配布が行われるだけで頻度も少ない。
5、文化、習慣の違い。ゴミ出しの規則、分別。規則が微細な点まで記載されているので理解に苦しむ。簡潔でわかりやすい言葉で説明を記載して欲しい。
6、日本語独特の曖昧さを含んだ言葉遣い:外国人にとって理解ができない。
①「ちょっと無理です」95%不可能を意味する。
②「この用紙は、学校に出した方がよいですよ」絶対に出さなければならないのか、出さなくてもよいのか判断に苦しむ。
③「いいです」拒否をしているのか、受け入れているのかはっきりしない。
④政治家が言う「善処します」は、何もしないことを意味している。
~~~~~~~~~~~~~ 受講生の意見、感想 ~~~~~~~~~~~~~~
・ペルーから来日されたルシアさんの日本にきて困ったこと、日本語を知らない外国人に一番必要な言葉は何かというお話納得できました。今後外国人に日本語を教えることがあったら参考にしたい。
・松尾講師のお話は素晴らしい、経験豊かな方のお話は内容がわかりやすく感動した。生きるためのコミュニケーション「危ない」 「トイレはどこ」などの言葉を知ることが大切。狭山市駅で困っている外国人がいたらその内容を聞き、お手伝いができるようにしたい。
・日本語講師の手伝いをしたい。
・言葉の理解、相互の文化の違いを理解すること。日本語の曖昧さを使わないで、わかりやすく、はっきりとした意思の伝達ができるよう努力をしたい。
・外国人への好奇心は持ち続けていますが、ふれあう機会は少ない。今日はルシアさんの実生活にむすびついたお話が聞けて大変参考になりました。
・2020年のオリンピック、ゴルフ競技に向けて、狭山市駅から会場までの地図、PR用のガイドを作成してみたい。
~~~~~~~~~ 講座リーダーのコメント 江頭 誠治 ~~~~~~~~~
受講生の外国人と国際交流を持ちたいという意志は非常に強いことがわかるが、実際にはその機会は非常に少ないことも理解できる。今回の日本語を教えることから始める国際交流は、受講生にとっても取り組みやすいテーマであることがわかった。外国人が日本に来て初めて生活を開始するにあたって、一番必要とする言葉、危険から自分の身を守る言葉、日本の習慣、生活をしていくための規則(ゴミの分別)については、マニュアルに従ってわかりやすく教えてあげることが、在留外国人にとっても有益であり周りに住む、日本人とのトラブルを避ける国際交流の第1歩ではないだろうか。 知らないことを親切に分かりやすく教えることが、真の国際交流につながっていくこと、言葉による意思疎通がいかに大切であるかを今回の講座によって教えられました。