第8回 聞き書調査の実践(その1) ※グループ単位で聞き書き
写真 : スタッフ 米田香子
文章 : 受講生 鈴木房子
平成27年1月23日 狭山元気プラザにおいて、「さやまの生活文化伝承講座 第8回」の講座が開かれました。今回は聴きとり調査の第1回目です。循環型農業、茶仕事の2班に分かれ聴きとりをします。それぞれの話者として中田晃先生、横田洋志先生をお招きしました。
ここでは循環型農業についての講座の内容をお話いたします。髙橋光昭先生には全般のまとめをしていただきました。
最初に、髙橋先生から茶仕事、循環型農業の説明があり、聴きとりの注意点などもありました。二つの教室に分かれ、それぞれ 循環型農業、茶仕事の聴きとりが始まりました。受講生から、基本的な質問が次々に出され、中田晃先生が一つ一つ丁寧に答えてくださいました。
「農業はどれくらいやってこられたのですか?」
先祖代々の農業を引き継ぎ、自分が主体となってからは42年間です。
「主な作物は?」
作物に関しては、当初はほうれん草、チンゲン菜、小松菜が中心であったが現在は水菜、里芋、ジャガイモを主に作っている。 40年ほど前までこの地域では牛蒡の栽培が盛んで“入間牛蒡”のブランドで、関西に出荷していたが、先生の畑では、30年くらい前からは作っていない。
「落ち葉掃きについて?」
新田開発の時作られた平地林(ヤマ)は、木や落ち葉を燃料や肥料として利用してきたが、昭和40年代初めあたりから化学肥料が盛んに使用されるようになり、平地林は次第に見捨てられるようになった。化学肥料では、どうしても天然のミネラルである微量成分の摂取が難しい。
化学肥料偏重の傾向で、栄養が偏ったりして、作物が病原菌におかされるようになった。入間牛蒡も肥料やけがおこり、次第に作られなくなった。私の雑木林では毎年“体験落ち葉掃き”を実施して、落ち葉掃きや倒木を集める体験をしてもらっている。
落ち葉は、“ツクコ”或いは“ツクテッパ”と呼ぶ“堆肥場(堆肥場所)”に入れて、上から家畜の糞尿を混ぜて、“切り返し”(バクテリアの働きを促すために混ぜる事)を行う。温度が30℃~40℃になるので雑菌が死滅する。堆肥場の大きさは1m50~2mくらいあり、発酵するまでは雨にあてる。発酵してからはビニールで覆う。
“くまで”で掃き寄せた落ち葉を“ハチホンバサミ”(かごの一種)に入れ、上から踏みつけて大人二人で持つ。高さが約90cm~1mくらいある。作業は朝から夕方までかかるが、平地林(ヤマ)は風がないし結構暖かい。落ち葉掃きは、1月~2月には大体終わる。今では、落ち葉掃きを行っている農家は近隣で4~5軒しかなくなった。
「堆肥を使って育てた作物は、出荷の際 区別されるのですか?」
配合肥料、菜種かす、フスマ、食物などの指定された肥料を使っているものはブランド品として売っている。 また、直売場やコープ、スーパーなどで生産者の名前を入れて販売している。また、レストランなどを仲介して直接販売するプロジェクトなども手掛けている。
「葉物を水菜に変えられた理由は?」
ほうれん草は移植栽培ができないので種から植えるが、そうすると収穫までの期間がかかる。水菜に変えた理由は、関西では普及していた水菜を、農林振興センターの職員の勧めで始めたのがきっかけ。
「薬剤散布について」
“生産履歴”(薬剤散布から消費されるまでの期間)が定められていてその基準を守って散布する。 野菜の種類によっても許可される農薬が異なる。
地球温暖化の影響で今までにいなかった害虫が大発生する事もあり、作物の北限も変わってきている。
中田先生は“落ち葉掃き”は毎年しないと木の種類も変化し、笹も生えてくる。そうなると、人が入れない林となってしまう。堀兼はアカマツが多く、落ち葉掃きの後は木を伐採して燃料にしていた。行政でも税金でアカマツを伐採していた。昭和30年代以降はガス、石油の普及で木の伐採をしなくなり、林の姿が変わってしまったと、手入れの必要性を強調された。
最後に、循環型農業と有機農法の違いについての話を伺いました。
・有機農法は生産段階で、100%有機物で育て、無農薬である。
・循環型農業とは家畜を飼う → 排泄物を肥料にする → 野菜を育てる → ゴミを堆肥にする等、自然の循環を利用した農法のことで、土壌消毒や農薬も散布する。
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※ 髙橋光昭先生は平成22年3月まで狭山市立・博物館館長を務められました
先日の狭山市制施行60年の記念式典では市政功労者の感謝状をうけておられます
狭山市文化財保護審議会 副委員長
さやま市民大学 狭山の歴史学科講師
狭山博物館主催 古文書読解講座講師 等もなさっておられます
※ 中田晃先生は「さやま緑と里の会」会長をしていらっしゃいます。
※ 横田洋志先生は、お茶の生産、販売をされています。
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