第6回 聞き書き調査の内容と方法の学習 “その1”
写真・文責 : 受講生 鈴木房子
年の瀬もせまった12月26日 狭山元気プラザにおいて、26年度最後の講座が開かれました。いよいよ次回から始まる、聞き書き調査の内容と方法について、髙橋光昭先生からお話を伺いました。
予備知識として養蚕、お茶、種もみの保存方法、さつま芋の植え付けについて髙橋光昭先生からお話がありました。
- 養蚕
蚕(かいこ)は作業が大変なことから、殆どの場合、種紙に卵を植え付けたものを購入して使用しました。蚕は成長過程が1眠2眠3眠4眠とあり、その間は大変な作業だったそうです。普段寝所として使っている部屋も蚕部屋にして自分たちは納屋で寝ました。養蚕は短期間で現金になったそうで農家にとって貴重な収入源でした。当時蚕の世話は女性の仕事であったので男性は女性に頭が上がらなかったと言われています。小正月にはまゆの豊作を願い、米で作ったまゆ玉やその他いろいろなものを飾って祝いました。 - お茶
お茶摘みは技術を要し、摘み残しが出ないように熟練した人を遠方から雇いました。時期が集中するため雇う方はおやつを用意して何とか来てもらおうとしました。おやつが美味しいと評判のところには人が集まったそうです。お茶摘みの時期は学校も休みとなりました。狭山ではいかに霜の害を防ぐかが一番の課題だったそうです。 - 麦作
麦は、さつま芋等の植えてあるところに、主に冬作付されるが、大麦、小麦、ビール麦を蒔いたそうです。まず、畑うない、堆肥(落葉等)からはじまり麦まき、麦踏み、麦刈り、脱穀まで調べることは多いとのことでした。 - さつま芋
S30年代~S60年代さつま芋は“さつま床”に種芋を並べて植えました。これを“ふせこみ”と言います。そこから出た芽(さつま苗)を摘み取って植えました。途中で地面についた所から出た芽は剥がしてとりました。これを“つるがえし”と言ったそうです。さつま床を作るときは、くず(落葉)をかなり厚く敷きその上から人が踏んで、間に肥やしをまき、又くずを重ねる作業をしたそうです。
いよいよ、聞き書きの具体的な方法です。
- 基礎データを聞き出す。
1)氏名、年齢、住所、所属している自治会の名前など。
2)田畑の面積、年数、何を植えてきたか。
参考として 10反=1町、1反=300坪、1畝=30坪
3)話者がこの土地で生まれ育ったかどうか。
違う土地で育った場合は、作業の方法が変わってくる。
4)聞き書きの時代背景を定める。 - 生業についての聞き取り。
ハレ(非日常)、ケ(日常)にどのようなものを食べたか。
ハレの日に食べたものを“かわりもの”(非日常食)と言いました。うどんも“かわりもの”だったそうです。ハレとは、田植えの始まり、中間、終わり、正月、正月の準備、大掃除、来客のある時 等で普段と違う日をいいます。その時には“かわりもの”を頂いたそうです。雑煮は3日間、つぎつぎと盛たして、4日目に主(あるじ)がおじやにして食べたそうです。これを神様との共食と言いました。
今回の聞き取りはS30年代の頃の事についてであること。
聞きとりの注意点です。
- 事前学習
聞き取りの地区と話者についてある程度調べ予備知識を得ておく事。 - 計画・立案・準備
聞き書きをする地域の作物について予め調べ、質問を書き出しておく。 - 対象とする生業が何時始まって、いつ終わったか
- 参考文献を調べる。
市町村史を調べる。
S40年代後半、資料の編纂がはじまったが民俗編の中に狭山の生業についての記述はない。 - 役割分担をする。
役割分担はするが、聞き書きのときは全員がノートをとる。
ここで、1班、2班の作業分けがありました。
1班はお茶、2班は循環型農業の聞き書きに分かれました。
循環型農業について調べてみました。「農業に用いられる肥料や農薬、農具などを循環利用するものである。畜産や農業、家庭などで出る廃棄物を肥料に利用したり、農業で出るゴミを循環利用したりすること」とありました。かなり広い範囲です。ちなみに私は2班です。
続いて、実際の方法です。
- 話者を選ぶ(今回はすでに決められています)。
本来は、こちらから出かけて行って、近隣の住人や役所で聞き取り調査をしたうえで話者を選ぶ。 - 利害関係が共有する「ムラ」や、利害の対立する「ムラ」を選んで同じ質問をする。
- 調査は時候の挨拶から
いかに話者と打ち解けるかが大切。 - 調査地域の大体の様子を把握しておく。
- 服装にも注意
背広やスーツはダメ。時には農器具を探しに物置に行ったりすることも。
今後の予定です。
6回,7回 ・・・・聞き書き調査の内容と方法
8回、9回 ・・・・グループワーク
10回、11回・・・・まとめ、発表
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髙橋光昭先生は平成22年3月まで狭山市立・博物館館長を務められました。
狭山市制施行60年の記念式典では市政功労者の感謝状をうけておられます
狭山市文化財審議委員会 副委員長
さやま市民大学 狭山の歴史学科講師
狭山博物館主催 古文書読解講座講師 等もなさっておられます。
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