生涯現役の思考:実業家・渋沢栄一に学ぶ
日時 : 令和元年5月11日
場所 : 早稲田大学所沢キャンパス
講師 : 東京国際大学教授 高田知和
実業界を引退する頃(70歳)以降の渋沢が郷里に深く関わった事例を挙げ、地域づくりや人づくりの発想と人生後期をいかに生きたかを考えて行きたい。私と渋沢の接点、関心の契機は同郷(深谷市出身)であること、私自身が学生時代に「埼玉学生誘掖会」の学生寮に7年間住んだことだ。同会の「百年史」編纂に関わったが、渋沢の「埼玉学生誘掖会」への関わり方、深い考え方に感銘した。
1.渋沢栄一(1840-1931)の人となり
① 健康で体力抜群・精力絶倫だが、喘息持ちであった。健康の秘訣は「活動」にある。
② 対人ではどこまでも親切、人を見放さない。粘り強く、信念の人。
③ 温厚な人と思われがちだが実は激しい人。いざという時は信ずるところを曲げず、争う時はあくまでも争い、命に代えても怒ることを辞さない。
2.郷里の八基村、血洗島への貢献
① 農政談話会
② 産業基本調査の実施
③ 耕地整理の成果
④ 教育振興 など
3.渋沢の考え方の根底
① 人づくり、地域づくり論では、青年たちの郷里への貢献や地域振興を勧めている。
②渋沢の考え方の根底には、「論語と算盤」などの儒学の教え、特に後期水戸学の正当な継承がある。
4.渋沢の現実的な考え方
まず「私」があり、「私」がよく生きて行くためには「公」が良くなくてはいけない。だから「公益」を考えなくてはいけないという発想法である。
受講生の感想・意見
・産業人、実業家の渋沢栄一は良く知られているが、故郷や地方を大事にするまた自己よりも他者に重きを置く新しい渋沢像でした。興味深い講義ありがとうございました。
・生涯現役を実践した渋沢栄一が、どのような思考で日々社会に向かっていたかを沢山の貴重な資料を確認しながら辿っていただいた。八基村村政調査から耕地整理、公民学校へとつながる地域への取り組みを今回は初めて知り、まさに生涯現役で働くことの意味が良く分かった。
・埼玉県人として渋沢の生き方が理解できて良かった。