地産地消を目指す狭山の農業
日 時:6月14日(水)13:30~15:30
講 師:狭山市4Hクラブ 室岡晴真 氏
受講生:出席14名(欠席2名)
20~30代前半の若い農業者の組織、4Hクラブ。横のつながりを持ちながら、交流、課題解決、技術の向上を目的にしています。日本全国で670クラブあり、1万人の会員がいるのだそうです。世界70ヵ国以上に同じ名前で存在し、アメリカでは900万人、会員も5歳から21歳までだそうです。そんな4Hクラブですが、狭山市では現在5人のメンバーで活動しています。今回はそんな狭山4Hクラブ代表室岡さんの、人生初の講義です。
狭山の特産品「里芋」
狭山4Hクラブは市から貸与された畑で里芋を栽培しています。2017年からは狭山市役所職員の里芋研修も受け入れているそうで、年に3回、20人ほどが里芋植えから収穫までの作業を体験するそうです。
里芋は狭山市が全国でもトップクラスの産地で、市の野菜出荷額第1位です。品種はねっとりした食感の「土垂(どだれ)」とホクホク食感の「蓮根(はすね)」があります。出荷は土垂が約8割を占めるそうです。3月の植え付けから12月の収穫まで、里芋は土の中でゆっくり成長していきます。作業を順に説明していただく中で、なんと、小谷野市長のビニル張り姿も出てきました。狭山の里芋は消費者のニーズに応えて10等級にも分けられ、それが高い価値を持つ理由にもなっています。2020年にはさといも選果場ができ、出荷作業の時間が3分の1になったそうです。農家の悩みは商品にならない親芋です。一部はサトイモコロッケに活用されていますが、ほとんどは畑の隅に積まれ廃棄物となります。植付け時に保温用に使用するマルチシートの処理も悩みでしたが、最近では地中で分解する素材を使用しているそうです。
農業とSDGs
お馴染みのSDGs(持続可能な開発目標)、農業との関係についての考察もお聞きしました。まずは、食料自給率の低下。1965年に73%だった自給率が今や38%です。食料はいつでも輸入できるとは限らないのでできるだけ国内生産できるようにしていきたいと室岡さんは言います。次は食品ロス問題。規格外野菜や直売所で売れ残った野菜を市内飲食店に卸したり、加工用に回したりしているそうです。受講生の中からは「規格外野菜を安価で販売してくれたら嬉しいのに」の声も聞こえてきました。さらに、店頭に並ぶ商品の梱包にはバイオマスフィルムを使用しており、原料植物のCO2吸収と燃やすときのCO2放出でプラマイ0になるんだとか。
農薬についてもお話くださいました。農薬は悪いイメージがありますが、適切な量を守ることで安全に使用している、残留農薬の検査も定期的に行っている、細かな記録を取ってパスしないと出荷できない等々、厳しい管理の下で使用されています。また、収穫された作物が土の中の養分を奪ってしまうのでそれを補うために肥料を使います。「畑にとって肥料はご飯、農薬は薬」とのことでした。その他、高齢化、長く働くための効率的な作業や健康のための服装の工夫などもお話しいただきました。
狭山4Hクラブの活動
狭山4Hクラブは農業祭で野菜販売をしていましたが、最近では狭山市河川敷公園や狭山市駅、新狭山駅のイベント等で出店して直売しているそうです。イベントを通して消費者との交流を図っていきたいとのことでした。また、認知度を上げるため、直売野菜には4Hクラブのシールが貼られています。里芋に関しては独自のネーミングを付けて他産地との差別化、ブランド化を図りたいともお話されていました。農協を通すとお店に並ぶまでに2日かかりますが、直売所等は1日、時には朝採りの物もあるので、是非新鮮なものを求めてくださいと話が結ばれました。
質疑応答
問:4Hクラブ後の活動は?
回答:28歳までの年齢制限を30歳までに延ばしたのが現状。若手が4Hクラブでその後30代、40代のグループへとつながっていく。4Hクラブは歴史があるので今後も活動を続けていきたいが、皆20代後半なので数年後が心配。
問:酪農をしている人はいるのか?
回答:4Hメンバーにはいない。2、30年前はいろいろな分野があったが、今は少なくなってきている。いちごやシャインマスカットを作っている農家の後継者が4Hクラブに入ってくれないかと期待している。直売イベントの品数を増やしたい。
問:夏場に水を撒いているのを見かけるが?
回答:7月からは灌水の割り当てが決まっている。週に1回、4~6時間。その間に1週間分の水を畑に蓄える。今年の4Hクラブは火曜日の12時~16時。
受講生感想
・京都の有名な料亭に出荷している里芋があると聞いているので、どちらの里芋かなあと思いながら聞いていました。4Hクラブというのは農家の若手のクラブということ位しか知りませんでした。里芋畑が近くにあるので、これからはしっかり観察して生育を見守りたいと思いました。SDGsは普段関心を持っていることなので、野菜部門だけでしたが勉強になりました。講師の熱が伝わって来て良かったです。狭山市の里芋に是非名前をつけてください。また、4Hクラブのシールを貼って、野菜を沢山出荷してください。友達に宣伝します。
・狭山市の野菜出荷額が1位里芋、2位ほうれん草、3位枝豆と、具体的に知ることができました。里芋が10等級まであるとは知りませんでした。
・若い人が4Hクラブで横のつながりを持ち、いろいろなイベントに参加していくことを心強く思いました。
・とても分かりやすく説明してくださって、農業を頑張っている若者の熱意を感じました。