★ 開催日: 令和元年 11月26日(火) 時間 13:30~15:309
★ 場 所: 狭山元気プラザ 大会議室
★ 本日の担当講師: 多摩大学客員教授(構想博物館館長)
望月照彦先生
★ 講座スタッフ: 講座コーディネーター:さやま市民大学学長
小山周三先生
:講座リーダー:草野喜実勝、スタッフ:中山美喜子、有賀富士子
★ 講座テーマ:
「ヒューマン・レジリエンス&コミュニティ・レジリエンス」
~いまファシリテーターにとって大切な「社会強靭性」を考える~
◎はじめに:レジリエンスとは何か
*レジリエンスとは、人生と社会の困難を自身に共生化する柔らかな「強靭性」である
◎第1章:すでにあった日本の地域社会のレジリエンス精神・・・桜井徳太郎の民俗学
*これを私は「ゴムまり原理」とよぶ。つまり外部からの圧力が加わると民衆はそれに
抵抗する無駄を省いて、自分の方で凹んでしまう。外部からの圧力は決して永続的で
ないから、やがて終わる。だから外圧期間中は反抗したり積極的に攻めたりしないで、
外圧が引っ込むとその機を見て取って、再び表に現れフルに機能する。無理をしない
からまりの生命力は永続的である。結局、民衆の側、共同体の部落・村落が勝利を
収めるからである。『民間信仰の研究・共同体の民俗規定:第5編共同体の結衆』より抜粋
*2018年7月の大豪雨、愛媛の自適農・西山敬三さんはいかに乗り越えたか。
松山市郊外に暮らす西山敬三さんは、農業を愛し、自在に生きる「自適農」の哲学
を持つ。自然の苛烈さを恨むのではなく逆に容赦のない地球の躍動を愛でる。
弱い人間が、強い自然に鍛えられより強く生きられる自己を愛でる。
その自然には悠久の哲理があるがAIやビックデータには摂理も情念も無縁である。
◎第2章:私にレジリエンスの大切さを教えてくれたワルシャワの少女
*2016年、ショパンの生まれ故郷・ワルシャワを訪ねた。ショパンは人一倍の愛
国者で、「革命」を始めとして激しいレジリエンスの曲を残している。一夜、カテリ
ーナ・ヒュシュタのコンサートを楽しんだが、ショパンの心を伝えてくれる演奏だった。
*ガイドのバシャさんの想いも深い案内が心に響くものだった。
バシャさんが、「あの一人の少女を見てください」と私たちに語り掛けた
街角に佇む一人の乙女との出会いがこの旅を実に豊かなものしてくれた、と私には思える。
(蜂起に激怒したヒットラーは、都市中心部の完全破壊を命令した。然し今では、ワルシャワ
の商業観光の最も美しい舞台となっている。「彼女の戦場での看護婦のスタイルは彼女
の生きていく愛ある意思の証です」)
◎第3章:私たちは今、監視され管理され、ロボット化への道程がデザインされる。
*個人の情報がネットや行政を通じて収集されて、それが勝手にマーケットに適用さ
れ、売買される時代。個人に150個のセンサーが取り付けられ、健康管理等が行わ
れるが、それらは全てビックデータとなる。
*GAFAというデータキャピタリズムのめざすものは、人間に付帯した情報収奪
*科学と技術の進歩が人間の頭脳を超える時、何が起こるのか。
*ユヴァル・ノア・ハラリは人類の未来を問いかける。AIやバイオテクノロジーが
人間自身を高度に変容させる時代が来た。ホモ・デウス以外は「無用者階級」にな
る。生き物はアルゴリズム、生命はデータ処理。知能と意識とは、どちらが価値が
あるか。
*先端科学や先端技術の人間操作主義に、人間自身はどう拮抗するのだろうか。
第4章:ロマ(ジプシー)の人々のおおらかな暮らしを未来社会は超えられるか
*現代社会の哲学課題は「ノマドロジー」である・・・遊牧民=富遊層(×富裕層)
現在、EUを中心に1000万人のジプシー系民族がいると推定され、彼らは多く
国、法律、技術そして情報からもフリーだ。
彼らは自動車もスマフォも、キャッシュカードも持たない持っているのは家族の連
帯と、馬車と犬と自由な人生である
第5章:モンドラゴンのホセ・マリア神父と地域産業おこしの思想と実践
*モンドラゴン(竜の山)は、バスク地方でも最も貧しい村だった。
ホセ・マリア・アリスメンディアリエタ神父は1917年生まれ。カソリック修道会の神父で、
反フランコの自由主義者だった。フランコ軍に何度も捕まった。
*マリアは、神学校から1941年助任司祭として赴任した。彼が神に祈る前に考えたのは、
この貧村を救うことだった。貧しさ以外に何もない村だった。
片目が義眼でいつもサングラスの神父の哲学は、「創造し所有せず、行動し私物化せず、
進歩し支配せず」という神父の哲学は私自身の理念でもある。
第6章:私の暮らす鎌倉に「異脳人」が集まり、レジリエンスな「面白人間」時代が。
*鎌倉資本主義の実践例として、カヤックが中心になり、「まちの社員食堂」を事業化した。
鎌倉は観光地。観光客が押しかけて、レストランや食堂は満杯。
観光公害を嘆かず、どの企業の社員も優先的に利用できる食堂を、自前で地元会社や食堂の
協力を得て、オープンさせた。
*「鎌倉資本主義」を地域自立の基盤として考察し、「3つの資本」論を進化させる。
★柳澤氏の3つの資本とは ★ 私の考えるの5つの資本(宇沢弘文モデルを勘案)
1 地域経済資本(財源や生産性) 1 地域人間資本:人間
2.地域社会資本(人のつながり) 2 地域基盤資本:インフラ
3 地域環境資本(自然や文化) 3 地域社会資本:文化
4 地域経済資本:経済
5 地域環境資本:自然
第7章:地域の生き生きした「人間資本」を活かす「人の駅」の構想
*近年、世界の中での日本の位置付けに、多くの国民、市民、住民が、そして外国人
も違和感を持ち始めているのではないだろうか。その評価には賛否両論あろうが、多くは
あの「ジャパン・アズ・No1」時代からすれば、右肩下がりの感は否めない。
*借金大国、地方都市崩壊、いじめ子殺し、災害列島・日本を、安全・安心・安寧の
国として、幸せと自由の暮らしが保持され、不測の事態に対する強靭性をどう地域社会
(コミュニティ)で創出させるか。
*やはり、「地域人間資本」を活かす手立てを施すことである。私にはずっと思い続け
てきた「人の駅」の事業構想が存在する。
*日本人の美風と、地域共同体の持つ美徳をレジリエンスの風土とする。
美風をえていた日本社会の柔らかい強さとは何か。
*なぜいま「人の駅」が必要か~ヒューマンサンクチュアリープラットホーム(HSP)の事業構想
*世界に美風を吹かす~「人の駅」の構想・主要機能
1 誰でも(市民、観光客、外国人)自由に訪れ、何でも相談できる場
2 外来者(外国人)と市民(町衆)の人間的な交流拠点(フレンズツーリズム)
3 住民や内外観光客の災害時の情報と救護のサンクチャリー
4 緊急宿泊・救護施設の仮設(プチホテル、プチホスピタル)
5 地域事業のインキュベーションの支援とスタートアップユニットの設置
6 地域事業、産業の開発マーケッティングと商品販売(ショップ)の展開
7 専門性の高いツアーガイドの養成(有料であっても可)
8 観光・訪問から、滞在・定住へサポーティング(マチネーゼ創造)
9 HSP(×DMO)機能と民間経営主体の成長事業ファンドレイジングづくり
●「人の駅」の機能1:
①市民、外来客(インバウンド)の受け入れ、と相互交流機能
②外来客ガイダンス、ガイド機能、災害時の情報対応センター
③地域事業創造と流通・販売機能、商品研究開発機能
●「人の駅」の機能2
④カフェ・レストランでの交流、食事、懇談、休憩機能
⑤会議室でのコンファレンス、商談、国際会議機能
⑥緊急時を軸にプチホテル形式の宿泊・静養機能
●「人の駅」の機能3
⑦街の歴史と文化のミュージアム、そして子供たちの学習の場
⑧レストルーム、温泉付きの湯あみ(災害時診療所機能も欲しい)
⑨タウンモビリティのためのEV/自転車のターミナル機能
◎「人の駅」に使えそうな残滓施設は地方・地域に数多く存在している。
◎終わりに:最大の謎は「人間とは何か」である。
1 天文学から・・・近年、地球に似たスーパーアースが注目されているが、地球の
奇跡を辿るものは皆無とされる
2 脳科学から・・・脳科学の発展は著し い進化があるが、意識とは何か、「心」とは、
まだ基本原理は90%未解明
3 経済学から・・・アダム・スミス以来、理性と合理の人間モデルは、非合理で私情
(非市場)となりデータ理解不能
4 「人間とは何か」が、科学や技術時代の最大課題!
<センス・オブ・ハピネス>
*「センス・オブ・ハピネス」、私がレイチェル・カーソンの「センス・オブ・ワンダー」
から引き継いだ次なる哲学です。
*私たち人間だけが持つ「心」が感じ取ることのできる「幸せ」という受容、
それこそが存在(生命)の証しである。
*「地域人間資本主義」の最大の価値は、幸せを感じ取り創り上げる力、なのです。
その力こそ人間が主役となる「柔らかい強靭性」の世界を生み出す源なのです。
以上
<受講生の感想・意見>
*レベルの高い講義で横文字が多くて難解でしたが、私は元気で長生きすることが
社会的にも大事なことだと思います。
*レジリエンス精神=自身に共生化する柔らかな「強靭性」を身に着けることで
良いファシリテーターとしての役割が果たせると思いました。
*ファシリテーターの資質に関しての心構えを具体的に説明頂き有難う御座いました。
*私はレジリエンス(困難に立ち向かうとき)それを乗り越える力が弱いのだと
思います。その力を得られるよう考えたいです。
*自分自身しっかりした哲学を持って、グループの理論の落としどころと未来の方向を
指し示す力が「レジリエンス」だと思う。
*素晴らしい先生でした。さすが小山先生のベストフレンドだと思いました。
*話の内容はとても勉強になりましたが、1章から7章は長すぎました。
*まずファシリテーターは自分自身が強靭性を持ち、センス・オブ・ハピネスを
持たなければならないことを学んだ。
*人間とは何か、哲学的であって、興味が有りました。それを活かせるまでには程遠いですが。
*「人の駅」「人民の酒場」を作りたいと思いました。
*大きなテーマでした。その上私の知らない話ばかりで大変刺激を受けました。
<講座リーダーコメント>草野喜実勝
*「レジリエンス」という聞きなれない言葉をキーワードに、ファシリテーターに
求められる「社会的強靭性」について様々な具体的事例を取り上げて説明され、
久々に“学問的”で“哲学的”な90分であったとおもう。
*受講生の受け止めにも様々あり、具体的に自分の立場、役割に活かせるものと考えるひと、
アカデミックな講義に感銘を受けた人などあるが、これだけの内容を90分に詰め込んだ講義には
限界があるということは、望月先生ご自身が十分承知しておられたことは後で知りました。
*望月先生が、市民大学の講座テーマとして「ファシリテーション論」を採り上げた小山学長
の構想力、着眼点の素晴らしさに感嘆しきりであったのが印象的でした。