☆ 開催日 :令和元年 7月19日(金) 時間 13:30~15:30
☆ 場 所: 新狭山ハイツ「まるた小屋」他
☆ 担当講師: NPO法人グリーンオフィスさやま 代表理事 毛塚 弘氏、副代表 中村ルミ子氏
☆ 講座スタッフ :講座コーディネーター:さやま市民大学学長 小山周三、
講座リーダー:草野 喜実勝、スタッフ:江頭誠治、中山美喜子、松瀬陽子
☆ 本日の講座のテーマ:
「住みこなすためのコミュニティ・デザインとコミュニティ・マネジメント」
~新狭山ハイツにおける、誰もが住み続けたいまち・住みたくなるまちづくり
1)新狭山ハイツのプロフィール
*昭和48年~49年大成グループは建設した民間分譲団地
*5階建ての32棟(当初770戸)に現在は715世帯、1,365人が居住。
2)団地発のNPO法人「グリーンオフィスさやま」の誕生
*発案:2001年、ハイツのコミュニティ活動の中核、主として環境保全に関わってきた担
い手たちが相互に連携し合い、“素敵に加齢するまちづくり”を、そして“生きがい雇用
の場の創出を“と、NPOの立ち上げを発案
*設立目的:狭山市及びその周辺地域を対象に、安心かつ楽しく住み続けられる街・コミ
ユニティの実現を目指す、
①環境に配慮した環境保全型コミュニティづくり
②生活者にやさしい福祉型コミュニティづくり
③遊び心でふれあいを育む育縁型コミュニティづくり
④安心して住める定住型コミュニティづくり
*法人設立:2003年4月にNPO法人「グリーンオフィスさやま(愛称:NPOじおす)
設立(現在の会員数31名、賛助会員数38名、法人会員3社)
3)少子高齢化の加速を見据えた模索(2010年〜)
①背景:「建て替えせずに築70年以上住み続ける」とすれば“建物の老い”に加えて
“住み手の老い”への対応が大きな課題。築38年を経過した今(2010年時点)これ
からのハイツの姿を「新生ハイツ35年プラン」として描こう。
②対応:2010年度NPO主導(自治会、管理組合法人協賛)のもとで、下記のことを考え
る「プラットホーム」を提供。⇒地域が抱える悩まし課題の確認「新生ハイツ35年プラ
ン」が目指す方向を確認
<「新生ハイツ35年プラン」が目指す方向>
●ハイツの「弱み」を「強み」に、「強み」を磨く
◆弱み:郊外立地(交通の便が悪い、店舗が少ない、資産価値の大幅低下等
➡素敵な郊外の暮らし(たおやか里との触れ合い、身近に楽農)が楽しめる団地に
◇強み:培ってきた豊かな環境遺産・活力あるコミュニティ資産
➡二つの資産に磨きをかけつつ、高齢者はもとより、子育て世代にとっても住み心地
の良い団地を目指す。
4)団地再生に向けた新たな挑戦(2011年〜2017年)
*NPO主導で団地再生に向けての3つのアクションを展開 (1)アクション1.2011年〜2013年度;新生ハイツ35年プランの作成とその推進 *埼玉県の補助事業「地域課題解決型協働事業」(補助金:120面円)を活かして「新生
ハイツ35年プランの作成とその推進」に取り組む。
① たまり場機能の強化〜既存のたまり場∔集会場を改修したコミカフェ「ココベリー」開業
② 住民福祉体制の拡充〜既存の生活支援・助け合いの輪+買い物支援サービスに着手
③ 環境の付加価値化〜既存の花壇(8か所)+里親制度による花壇(2か所)を増設
④ 文化的環境の向上〜既存の手作り作品展の拡充、ブックスタートに着手
⑤ 情報受発信機能の強化〜蓄積情報のアーカイブス化、NPOのH.Pの拡充。
⑥ 空き室流動化の促進〜ハイツの魅力を紹介するチラシの作成・配布
(2)アクション2.2015年〜2016年:新狭山ハイツ・ブランディング・プロジェクト推進
*国交省の補助金「住宅団地型既存住宅流通促進モデル事業」(337万円)を活かして「
新生ハイツ・ブランディング・プロジェクト」に取り組む。
●ブランド「DIY」及び「里並み」の具現化と「工房」の改修
●「おたがいさま里食堂」開催
(3)アクション3.2017年度
*ハウジングアンドコミュニティ財団の「住まいとコミュニティづくり助成金」(110万
円)を活かし、「団地版空き部屋バンクと空き部屋モデルルームづくり」に取り組む。
*空き部屋をリノベーションし、モデルルームとして賃貸する事業。
(4)築80年を住み継ぐために:2018年〜
●築80年を住み継ぐための“住みこなし”について考え、出来る事から行動へ
➡“住みこなし”について考える幕開きイベントとして「記念講演会」を開催
➡関係団体の参加を得て、築80年を住み継ぐための課題及び対策を考えるプラットフォ
フォームとして「住みこなし会議」を開催(3月):参加者ができることを「ハイツの
木」として纏めた。
➡超高齢化社会の加速→コミュニティ・ケア体制の充実∔空き部屋対策、若い世代の入居
促進など
(5)ハイツの取り組みに対するマスコミ等の評価
イ)NHK「ご近所の底力―マンションの老朽化」(2008年11月14日放送)では建て替え
せずに修繕だけで頑張るマンションとして取り上げられた。
ロ)NHK「クローズアップ現代―どうするマンショントラブル?」(2016年8月31日)
では、マンションの住人同士の合意形成、問題解決の場として「話し合いの場」を如何
に活用し、円滑に運営してきたかの成功事例として紹介された。
ハ)テレビ朝日「大改造!!ビフォーアフター」(2018年9月23日)では、“若い芸人家族
“がハイツの空き部屋を購入し、フル・リフォームして住んでいる様子が放映され、
本人のH/Pへのアクセス数が900近くあり、リフォーム後の部屋を「オープンハウス:
として開放し多くの見学者が訪れている様子が放映された。 (6)最後にこれまでの取りくみを通じて拘ってきたこと
①セルフエイド:自分たちでできりことは自分たちの知恵と労力とお金で
②面白がり屋精神:遊び心で自分と地域を磨く
③継続は力なり:ひとつの成就感から新たな夢を紡ぐ
④地域はメダカの学校:地域には知恵や技を持った人材があり、その活用こそが大事 ⑤ ゆるやかな繋がり:多様な担い手が知恵を出し合い、支え合って、牽引力を強化
⑥ 活動の相対化:外部との交流を通じて他者に学びつつ、自分たちの活動を再評価
(追加情報)2019年6月10日発行、「壊さないマンションの未来を考える」(園田眞理子著)
の中で、「新狭山ハイツ」と「NPO法人じおす」の取り組みについて紹介されました。
<受講生の意見・感想>
*団地に緑を増やすこと。5年で倍増できたのは住民が主体的に管理し、その活動の中で人材が育ってきたのだと思う。
*きちっとしたルールではなく、常に集まれる場所で意見を出し合っていくことで、自由な
繋がりが出来上がっている、と思う。
*自治会、管理組合、NPO法人の3者が協力し合って成功している(ことが分かった。)
*素晴らしい取り組みで、敬服しましたが、客観的に見て今後の活動には厳しさを感じました
*毛塚代表の愚直にセルフエイドで40年以上取り組んできた姿勢に感銘を受けました。
*私は高齢者なのでやはり高齢者対策に注目しました。
*自治会、管理組合、NPO法人が良く連携して合意形成され成果を挙げていること。
*全体的にまちが綺麗に、なっていること。話し合いを上手くやることが大切である。と感じた。
<講座リーダーのコメント> 草野 喜実勝
*久しぶりのハイツ視察(7年振り?)であったが、その時より更に緑が濃く、豊かになっている感じがした。
*立て直しせず修繕だけで40年、50年、あるいは80年も住み続ける団地という存在は矢張り
珍しいものだということが分かった。
*千数百名の住民の意見を取りまとめて一つの方向に向かうという大事業を長年に亘ってになってきた毛塚代表の人柄、熱意には敬服するしかない、 と感んじた。
*自治会、管理組合、そしてNPO法人という目的も役割も全く違う組織の利害関係を上手く
調整し良好な関係を維持していることも、驚きである。