*テーマ:オリンピック会場都市狹山ができるインバウンドのおもてなしを考える
実施日:2018年6月12日(火) 13:30~15:30
場所: 狹山元気プラザ大会議室
講師: 公益社団法人 国際日本語普及協会 松尾 恭子氏、LUCIA さん(ペルー出身)
●AJALT(公益社団法人 日本語普及協会)は日本語を通して、文化や習慣を異にする人々が互いに理解しあい共存しあう社会の実現をめざして事業活動を進めている。
AJALT事業6つの柱
1.対象別日本語教育の企画と実施
2.教師育成プログラムの企画と実施
3.研究調査活動
4.地域在住の外国人に対する支援、協力
5.広報活動
6.教材開発と出版活動
◎本日の講座は受講生10名を3グループに分け、+スタッフ1名づつが参加してワークショップを行った。
1.おもてなしとは、どんなことでしょうか?
・簡潔でわかりやすく平易な言葉で話をする。
・積極的に話しかける。
・相手が困っていないか気遣う。
・情報を積極的に提供する。狭山市の交通状況、名所、景観がきれいな場所、等あらかじめ調査し、実際にその 場所を把握しておくことが必要。
・挨拶はその国の言葉で始める。道案内はスマホを使用して案内する。
2.突然何かを聞かれたらどうするか?
・あらかじめ、駅周辺の飲食、カフェ、狭山茶の案内などの知識を蓄えておく。駅周辺で販売されている物品等を調査しておく。
・1人で対応できないときは、ボランティア活動仲間を加え、ペン、メモ用紙、スマホなどを使って、相手が聞きたいことを的確に理解して、正確に教えてあげる。
・災害時に対応ができないでいる外国人に対しては、笑顔をもって話しかけ、不安を取り除き落ち着かせる。そのうえで、避難所、電車の運行状況、体調を崩したインバウンド客には救護所などへの案内を行う。
3.LUCIAさん
ペルー出身で、ペルー大学でジャーナリズムの勉強を修了。来日後学芸大学付属高校でスペイン語講師。NHK でスペイン語講師を務めた。日高在住、中学3年の女児有り。
~日本での体験談~
1.来日してすぐのころ、誰も知人はいなかった。近所に住んでいた本屋のおじいさんとおばあさんが親切に話し相手となっていただいた。日本語がわからないLUCIAさんは紙ペン持参でお二人と筆談を行った。こたつに入ってお茶菓子にサツマイモ(バターと塩)を食べながら、日本食、家族、日本の習慣、政治の話など多岐にわたって筆談をしながら日本のことを学んだ。LLUCIAさんも自分の家族、犬や小鳥、食事の話など絵を描いて表現しお互いに意志の疎通を行うことができた。
・入院によりトイレ、医療用語など必要なものから言葉を覚えたことと、子供の成長に伴い多くの日本語を学んだ。
2.常盤台に住んでいたころ、夏、駅のタクシー乗り場で待っていたら、暑さのためと妊娠していたため体調が悪くなり、めまい、嘔吐があり道端に座り込んでしまった。
前方に2人の女性がいたが、LUCIAさんのことを見ても知らぬふりをして去って行ってしまった。そこへトラックの運転手がそばを通り、降りてきて親切に世話をしてくれた。あいにくとタクシーもキャッチできず、容態はますます悪化した。それを見た運転手は彼女をトラックに乗せ、住所を書いた紙を片手に自宅まで送ってくれた。
全く知らない通りがかりのドライバーが示してくれた親切さに感動をした。
◎松尾講師によるまとめ
・笑顔をもって接する。
・動作、ボディーランゲージにより言葉が通じなくても安心感を与えることができる。
・話しかける言葉は短く切る。敬語はインバウンドには必要なし。
・紙、ペンを用意をしておき、筆談をする。
・わからないときは、1人で対応するのではなく、仲間を呼び協力を得る。
・6月17日(日)午前8時に大阪地区で起きた震度6の地震により、交通網がストップ。長時間にわたって運行が中止となった。日本語による情報通達は問題がなかったが、外国人に向けての情報伝達がほとんど行われず、ターミナル駅で戸惑った外国人が多数見受けられた。知人にメールを送り、地震災害と交通状況の情報を送信してもらって初めて自分の行動を決めて不安感を払しょくすることができたとの新聞記事が掲載されていた。
インバウンドの旅行者にも素早く情報が伝達できるよう組織作りが急がれる。
・スマホ、インターネットによる情報収集が大切。戸惑っている外国人に安心して行動できるよう、安全、安心につながり行動できる情報提供が災害時に最も必要な“おもてなし”ではないだろうか。2020年まであとわずか意識向上に努力をお願いしたい。
<受講生のコメント>
1.インバウンドのおもてなしで大切なこと
・笑顔で接する、・楽しい思い出を作ってあげる、・積極的に話しかける・相互の意思を十分に理解する
2.外国人へ知らせる緊急時の避難先は
・近くの小中学校、公民館、自治会館、公園、市役所。病院
3.地震により交通機関の運行が停止したときの行動
・電車運行停止の情報、原因、待ち時間に関する情報、何か手伝えることを聞く。
・地震の揺れがひどく避難が必要な場合の避難先を地図で示す。まとめて案内する。
・要点をまとめて、短い表現で、わかりやすく説明できるよう訓練をする。
<講座リーダーのコメント> 江頭 誠治
LUCIAさんが日本で初めてあった親切な、思いやりのある人は高齢者の夫妻であったこと。言葉はお互いに不自由であっても、相手の気持ちを思いやりをもって理解しようとすれば、ペンと紙がれば十分に理解し合えることが証明されており幸せな経験をされたと思う。
インバウンドで日本を訪問する外国人にとっても、ちょっとした思いやりの心をもって接すれば、お互いの意思は通じ、さわやかな気持ちと、感謝の念が湧き出てきて素晴らしい笑顔が交わされる。2020年のオリンピック・パラリンピックに向けて短い言葉で、暖かい会話が交わせるよう、みんなで頑張りたいと思います。