「骨格筋を代謝器官として考える」
日時:7月8日(土)10:40~12:20
講師:早稲田大学スポーツ科学学術院 教授 秋本 崇之 先生
受講生:出席34名(2名)
経歴
出身地:愛知県豊田市出身
筑波大学にて、学士、修士、博士(医学)取得
東京大学(駒場)助手(2000-2004)
Duke大学(アメリカ)ポスドク(2003-2006)
早稲田大学(早稲田) 講師 (2005-2007)
東京大学(本郷)講師(2007-2016)
早稲田大学(所沢)教授 (2016- )
趣味
ラグビー、自転車、旅、酒、骨董、狩猟
狩猟が趣味だそうで捕った動物は研究に使った後、食用にされるそうです。
骨格筋の基礎
骨格筋の可塑性
骨格筋の再生医療
骨格筋の基礎
筋肉の種類
筋肉には以下のような種類とそれぞれの働きがある
骨格筋(Skeletal muscle):随意筋で組織上は横紋筋
人間が体を動かすときに主体となる筋肉で速筋と遅筋がある
心筋(Cardiac muscle):不随意筋で組織上は横紋筋
心臓を24時間動かし続けている。心臓以外には存在しない
自律神経の支配を受けている「不随意筋」のため、自分で自由にコントロールできない
平滑筋(Smooth muscle):血管壁や内臓壁に存在している筋肉
血管の収縮作用や胃腸の動きに関与し、緊張・収縮によって血管や内臓の機能を保っている
自律神経の支配下に置かれているため、自分の意志が関与できない「不随意筋」
随意筋:自分の意思で動かせる筋肉
不随意筋:自分の意思で動かせない筋肉
骨格筋の機能
骨格筋の機能として、運動・代謝がある。
ミオシンはアクチン上を運動するタンパク質で、アクチンを引張っる事により筋肉が収縮する。また代謝に関与する。
筋力と筋量はほぼ比例する(2003年福永先生により)
加齢や男女によっても筋量は変化する。
加齢により、大腿前、後の筋量は減少する。
代謝 Energy
右図のように炭水化物、タンパク質はそれぞれ単体の単糖、アミノ酸がくっついた状態で存在する。胃でサブユニットの形に消化され、これが細胞の中でエネルギーに変わる。これを代謝という。
まとめ
❍骨格筋は健康的な体重をもつヒトの体重の約40%を占める,生体内で最も大きな組織である。(Rolfe and Brown, 1997)
❍骨格筋と心筋は安静時エネルギー消費量の約30%を消費し,運動時に増加するエネルギー消費量のほぼ100%を占める。(Gallagher et al., 1998)
筋繊維タイプ
速筋・遅筋
筋繊維タイプには、遅筋 速筋の2種類があり上図のような特性がある。
魚で例えれば遅筋:マグロのように急な動きはできないが疲れにくい。
速筋:ヒラメのように急な動きはできるが永くは泳げない。
遅筋は持久力を発揮するときに使用される筋肉で酸素を使って糖質や脂質を燃焼させてエネルギーを作る。主にウォ-キングなどの有酸素運動をするときに使われる。
速筋は遅筋に比べ体積が大きく、瞬発的に大きな力を出す筋肉で、主に糖質をエネルギー源として利用し、遅筋とは異なりこの反応には酸素を必要としない。そのため、筋力トレーニングや短距離走などは無酸素運動と呼ばれる。
瞬発力に優位な筋肉を有する速筋の多い人と脂肪が蓄積しづらい筋肉を持つ遅筋の多い人の存在は遺伝の影響もある。
しかし速筋の多い人でも有酸素運動を続け筋肉に繰り返し負荷をかけることによって肥満を防ぐことができる。
まとめ
❍骨格筋を構成する筋線維にはいくつかのタイプがある。
❍筋線維タイプにより収縮・代謝特性が異なる。
❍骨格筋は代謝性疾患の治療標的になり得る。
骨格筋の可塑性
レジスタンス運動では速筋が増え、持久性の運動では遅筋が増える。
筋肉の可塑性とは、筋肉を使わなければヒラメ型の筋肉(速筋)が
相対的に多くなり、使えばマグロ型の筋肉(遅筋)に代わる。
これを筋肉の可塑性という。
上図のように、運動をすると緑色(遅筋)部分が多くなる。
老化による骨格筋関連疾患
フレイル(虚弱)
ロコモティブシンドローム
サルコペニア
サルコペニア骨格筋で起こる現象
❍筋力の低下
❍筋萎縮
❍神経筋接合部の変成
❍筋再性能の低下
❍筋線維間の線維化・脂肪沈着
まとめ
❍骨格筋の再生には筋組織幹細胞が重要な役割を果たしている
❍骨格筋は生理的要求に対して自身を適応させる「可塑性」に富む組織である
❍近年,加齢による筋萎縮が問題となっている
編集:講座スタッフ 鈴木 房子