狭山市周辺の地形と地質
日 時:5月24日(水)13:30~16:30
講 師:さやまナビーズ 加藤進 氏
受講生:出席14名(欠席2名)
狭山市立博物館で教育普及事業やイベント支援、展示物制作、資料整理、展示解説等を行っている博物館ボランティア「さやまナビーズ」の加藤進氏。大学は地質関係、現役時代は石油会社に勤務し、国内の地下資源のデータを扱っていたとか……。地下一筋の人生ですが、地形や地質についていろいろ調べ始めたのは会社を辞めてからだそうです。
「従来の地形学では地形種を単に地形と呼んでいましたが、地形種は丘陵や台地などの特定の形態的特徴を持つ部分、地形は山や平地などの地球表面の起伏の形状……」と、ちょっとややこしい話を、とても楽しそうに話し始めました。今日は足元から狭山を見直しました。
関東平野と狭山の地形
関東平野はご存じのように日本一広い平野です。17,000km2あり、国土の約5%を占めるのだとか。丘陵、台地、低地の区分が明瞭で、比較的台地や丘陵の割合が多いのが特長だそうです。武蔵野台地は多摩川が形成した複数の扇状地で、高さの異なった幾つかの地形面が存在します。狭山面(狭山丘陵)、所沢面(金子台・所沢台)、武蔵野面、立川面です。また、西側山地の東南麓には多くの丘陵があります。かつては一連の地形であったものが、丘陵地内に源を発する河川により細分化されたものと言われているそうです。狭山市近辺には狭山丘陵、加治丘陵がありますが、加治丘陵は山地から東の方に伸びているのに対し、狭山丘陵は武蔵野台地上に孤立丘として紡錘形状に分布しています。
現在の狭山は台地と低地からなっています。一番低いのが川沿いの低地であることはご存じの通りですが、入間川沿い、不老川沿いは低い立川面、その北側と南側にもう少し高い武蔵野面、そして所沢面(狭山市内で一番高い地点は、入間基地や狭山市役所のあたり)が伸びて来ています。
続いて地層の話……
地層の話は雄大な46億年前、地球誕生の先カンブリア時代から始まりました。狭山周辺の地層はごく最近、と言っても約250万年程前から堆積した地層です。それ以前は秩父など内陸部まで海域が広がっていたそうです。各地のボーリング調査の深井戸地質柱状図の対比の中には、今は閉館した狭山温泉「やまとの湯」の物もありました。お馴染みの関東ローム層が赤いのは灰色の火山灰の中の鉱物の鉄分がさびたためであるとか、最上部は有機物に由来して黒土になっているとか、思わず納得の話が次々出てきます。途中でチバニアンの話も……。同じ年表に「アキタニアン」とあり、思わずこれも?と思いましたが、日本の秋田ではなくフランス・アキテーヌの地名に由来するイタリアの地層だとか……。
地形・地層と水害・地震
狭山の水害ハザードマップについても、地形と地質の関係から説明していただきました。狭山丘陵を水源とする不老川は、流域は非常に短いのですが、川幅が非常に狭いために大雨が降れば水が溢れてしまいます。しかし、雨の少ない冬にはわずかな水が砂礫層に浸み込むので枯れてしまいます。一方、入間川はもっと山の方に水源があるので絶えず水が流れ、山が近いことから、大雨時には水かさが増し急な流れになって危険性が増します。
地震災害等に対しては、狭山市は立川断層を想定したハザードマップを提示しており、段丘の傾斜地のがけ崩れが心配ですが、おおむね台地の上なので比較的安全と言えます。
地質とお茶栽培
狭山の地は年間降水量が1,700㎜位あり水が豊かですが、台地の上にあるので水はけが良く乾きます。この上湿下乾の地は茶の生育に合っているので、狭山は茶の栽培の適地です。
質問タイム
質問タイムでは次のような意見交換がありました。
・三角州と扇状地の違い
・山登りで出会う石から知る地層の年代
・過去に何回も逆転した地球の磁場。地場の逆転は地球内部の流体部分の影響
等々、時代も場所もとてもスケールの大きな今日の講義でした。
受講生感想
・地学系は全くの素人なので単語の意味に興味がわきました。多摩川が関東地方形成に非常に大きな役割を果たしていたことが実感できました。
・全体的には聞きなれない言葉が多く難しかったが、チバニアンの話(磁場の変化)は興味深かったです。身近にお茶畑が多い理由が納得できました。不老川について等ターゲットを絞った話だと身近に感じられたかな……?と。スケールが大きくて、勉強不足を痛感しました。
・内容の濃い講義でした。狭山は地震に強いと言われる理由が分かりました。お茶の栽培に適している理由も分かりました。専門の方がとても分かり易くご説明下さり、有り難うございました。
・地形種という言葉を初めて知りました。「チバニアン」について詳しく分かりました。数々の資料を探し出し、最新の知識を得ていることに脱帽しました。質問に答えてもらい、有り難かったです。