狭山の歴史講座 野外学習 第1回 史跡・文化財めぐり「柏原地区」
写真・文責:狭山の歴史講座スタッフ 青山 泰夫
実施日:平成30年5月10日(木) 8時20分集合~12時45分現地解散
天 候:雨のち曇り 16度 (※11時30分頃まで梅雨のような雨が降りました)
地 区:柏原地区 コース距離 約5㎞
コース:狭山市駅西口広場(集合)柏原ニュータウン行バス→柏原東バス停下車…城山砦跡…常楽寺…長源寺…宮原遺跡…上宿の庚申塔…永代寺…柏原公民館(休憩)…柏原白鬚神社…西浄寺…円光寺…大山灯籠と大六天(現地解散)…柏原南バス停→狭山市駅西口
参加者:髙橋先生 受講生23名 スッタフ6名 狭山歴史ガイドの会8名 総勢38名
◇はじめに
いよいよ本日から、全9回にわたる「史跡・文化財めぐり(野外学習)」が始まりました。本講座のモットーである「楽しく学び、仲間をつくる」を基に、郷土に受け継がれてきた史跡・文化財という貴重な地域資源に直接触れ、仲間たちとワイワイガヤガヤしながら、その魅力を再発見してきます。今日は柏原地区です。雨に負けず、さぁ~、出発!
◇見学場所① 城山砦跡
ここ城山砦跡は、市内に唯一残る中世の城郭跡です。昭和48年(1973)に狭山市指定文化財・史跡に指定されました。現存する面積は約1万㎡です。この場所は入間川の流れに迫り出した台地上にあり、沖積面から10mほど高い河岸段丘上にあって標高は約50mです。ここは大変眺望が良く、南の方向に入間川宿、鎌倉街道上道の入間川の渡し、東の方向に川越を見渡すことができます。軍事的に重要な立地条件を備えており、物見櫓的な施設があったのではないかと考えられます。
城山砦跡入口から急坂を上り本郭跡へ 城山砦本廓跡で挨拶される髙橋先生
◇見学場所② 常楽寺
当寺は妙法山常楽寺といい、宗派は天台宗羽黒行人派です。本尊は木造不動明王坐像です。
創建の時期、開基、開山などは不明ですが、昭和63年(1988)に神田栄作家から発見された文書に「元文5年(1740)に西浄寺を同寺の末寺にする」との記載があるのでそれ以前と思われます。
境内には、一石に七体の観音像が細部まで丁寧に彫られた石仏がありますが、これは狭山市内に2基しかない「七観音」と呼ばれる貴重な石仏です。
常楽寺で説明するガイドの会会員 市内に2基しかない珍しい七観音
◇見学場所③ 長源寺
当寺は秀柏山長源寺といい、宗派は曹洞宗です。本寺は飯能市直竹にある長光寺で、本尊は木造千手観世音菩薩坐像です。開山は越前国(福井県)永平寺の底庵桂徹(ていあんけいてつ)大和尚です。開山の時期は、東国に曹洞宗の寺院が増加した17世紀初期と考えられます。境内では、江戸時代に建てられた二十三夜月待供養塔や普門品供養塔などの石仏に出会えます。
◇見学場所④ 宮原遺跡
長源寺の北側に広がる畑にある宮原遺跡は、智光山公園を水源とする小河川の右岸にある遺跡です。遺跡の規模は大きく、約2,600坪(85,500㎡、450m×190m)に及んでいます。
この遺跡からは、縄文前期後半から後期までの各時代に特徴的な形式の土器が発掘されています。
◇見学場所⑤ 上宿の庚申塔
この浮彫立像の「上宿の庚申塔」は、享保13年(1728)に柏原村の金子六左衛門他9名の庚申講中と常楽寺によって、五穀豊穣や二世安楽、そして塞(ふさ)ぎとしての無病息災や悪疫退散を願って建てられたものではないかと推察されます。
正面上部には日月と瑞雲、その下に一面六臂の青面金剛が邪鬼を踏まえた姿で刻まれています。またその下には3匹の猿と2羽の鶏が刻まれています。
浮彫立像の「上宿の庚申塔」 「上宿の庚申塔」を説明するガイドの会会員
◇見学場所⑥ 永代寺
当寺は金宝山永代寺といい、宗派は真言宗智山派です。本寺は坂戸市の大智寺で、本尊は木造虚空蔵(こくうぞう)菩薩坐像です。創建については諸説ありますが、記録を焼失しており不明です。木造不動明王及び二童子立像は、昭和61年(1986)に狭山市指定文化財・彫刻に指定されました。躍動感溢れるその姿は美術的にも優れ、狭山市内の不動明王の中の最高傑作といわれています。
永代寺本堂でご住職様のお話を傾聴 木造不動明王及び二童子立像
◇見学場所⑦ 柏原白鬚神社
当神社は旧柏原村の総鎮守で、祭神は猿田彦命(さるたひこのみこと)です。創建は古い記録が残っていないため不明ですが、当神社所蔵の天正18年(1590)の御正体(みしょうたい)が現存していることから、それ以前であると思われます。
当神社が所蔵する「御正体」、絵馬「子返しの図」、絵馬「陰陽和合図」、「韋駄天(いだてん)の額」、「柏原祇園囃子」の5つの文化財は、いずれも狭山市指定文化財になっています。
5つの文化財を説明するガイドの会会員 5つの文化財の1つ「御正体」
◇見学場所⑧ 西浄寺
当寺は威徳山西浄寺といい、宗派は真言宗霊雲寺(れいうんじ)派で東京湯島の霊雲寺の末寺です。本尊は木造大黒天立像です。
当寺の別名である甲子寺(きのえねでら)にちなみ奉納された河鍋暁斎作「ねずみの図」は、昭和50年(1975)年に狭山市指定文化財・絵画に指定されました(現在は狭山市立博物館で保管)。また境内には、宝篋印陀羅尼経を納める宝篋印塔と呼ばれる立派な石塔があります。
◇見学場所⑨ 円光寺
当寺は高麗山地蔵院円光寺といい、宗派は真言宗智山派で坂戸市にある大智寺の末寺です。本尊は木造不動明王坐像です。
当寺の銅造聖観世音菩薩立像は、昭和61年(1986)に狭山市指定文化財・彫刻に指定されました。
西浄寺境内に建つ立派な宝筐印塔 円光寺の銅造聖観世音菩薩立像
◇見学場所⑩ 大山灯籠と大六天
この石灯籠は、「大山灯籠」といわれています。文政13年(1830)に下宿の講である恵花組(えげぐみ)によって、五穀豊穣を願って建てられました。
正面に「大六天」と彫られたこの石碑は、安政6年(1859)に建てられました。大六天は仏説では、欲界の最上に位置する天魔で、祟り多い神様といわれています。また、大六天は散らかすのが好きな神様で、通称「ちらかしさま」とも呼ばれています。
—————————————————————————————————————————————————–ー
◇ 第1回「史跡・文化財めぐり(野外学習)」に参加して ◇
機関紙・広報担当 5班 小林 渉
今日は、第1回目の「狭山の歴史講座:野外学習」の日だ。外は雨が降っているが天気予報によると早めに上がるようで、「延期」の連絡もなく出掛けることにした。集合場所にはすでに多くの仲間が集まっていた。前週の座学では、縄文時代を中心とした遺跡・遺物等から縄文人の文化を学んだ。このことを中心とした野外学習かと思ったが、配布資料を見ると、見学場所10カ所のうち、遺跡関係は宮原遺跡だけであった。野外学習は地区別に行われるので、様々な時代の遺跡・建物・文化財を同時に見学するのは当然だが……年代別に整理し、その時代背景まで掴まえるのは難しそう。高校時代、世界史などを取らずに日本史にしておけば良かったかと反省しきり…頑張ろう!
今回の史跡・文化財めぐりで印象に残った場所は色々あったが、その一つが永代寺だ。ご住職様の説明を聴き、内陣に祀られている護摩焚きで真っ黒になっている「木造虚空蔵菩薩坐像」と「木造不動明王及び二童子立像」を見学した。このお寺は、以前は無住職であったそうだが、現在は内部も素晴らしく立派な本堂になっている。全国的に見ると無住職のお寺が増えているそうだが、今後とも、このお寺が維持され、さらに発展してもらいたいと思った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
◇おわりに
本日は、西武バス柏原南バス停に近い「大山灯籠と大六天」の見学終了後、現地解散となりました。しとしとと降る雨の中、初めての野外学習で多少気疲れもあったかと思いますが、10カ所の見学場所を楽しくめぐることができました。「狭山歴史ガイドの会」会員による分かり易い説明と髙橋先生の的確な補完説明により、わが街狭山市に残る史跡・文化財の魅力の一端を再発見できたのではないかと思います。