教えるためには自らが学ばねば
趣味の手打ちそばを初めてから約20年になります。さいたま市に道場を持つ「さいたま蕎麦打ち倶楽部」に所属し、先輩から手ほどを受けながら、仲間とそば作り・そば薀蓄を楽しんできました。それぞれ豊富な人生経験を持つ同年代の仲間が多かったので、居心地の良い同志の集まりでした。普段の稽古以外に、そば打ち大会の世話をしたり、日光でのそば祭り出店の手伝いなど、そばを通しての地域づくり活動にも参加してきました。それでも最初の10年間は貴重な経験は積んできましたが、「何となく続けてきた」に過ぎませんでした。5年ほど前に地元で「いるま蕎麦打ち倶楽部」を立ち上げ、参加メンバーにそば打ちの手ほどきをする指導的な立場になった時に、自分自身の腕を磨かねばならないことに気づかされました。ここから学ぶことに熱が入りました。
目標があるから頑張れる、諦めない
そば打ちの世界には「素人そば打ち段位認定制度」があります。「全麺協」という普及・振興団体があり、初段位から五段位までの段位取得試験が毎年、各地で行われています。二段位までそれほど難しくはありませんが、相当の稽古を積まないと、三段位以上には上がれません。指導者の資格は三段位以上ということになっています。三段位を目指すところから、そば打ちとの本格的な取り組みが始まりました。私が三段位に合格できたのが平成24年です。さらに難しい四段位に挑戦し合格したのが26年です。平成23年の秋から、元気プラザ内のコミュニティカフェで「そばの金曜庵」をオープンすることになり、ここが技術向上に大いに役立つことになりました。「おいしかった」という評価を頂くために、結構、自分では真剣に打ち込んできたつもりです。
趣味を持つ・長く続ける・教える、から「いきがい」が生まれる
そば打ちが高尚な趣味?かどうかは分かりませんが、自分で納得のいくそばを打つのが大変であることは間違いありません。どれだけやっても「到達点はない」と思います。だからこそ、一生懸命に打ち込み、自己研鑽を積む以外に上達の方法はありません。NHKの人気番組「プロフェッショナル」の主題歌ではありませんが、「一歩だけ前に進む」という日々精進の気持ちが大切だということがよく分かります。
何かを始めるのに、おそい、はやい、は関係ありません。「始めようと思った時の気持ちが師である」と千利休が言い残しています。ひたすら精進し続けることから、目指す「道」が拓かれていくようです。
俳優・故高倉健の生き方、「往く道は精進にして、忍びて終わり悔いなし」(比叡山延暦寺・大阿闍梨 酒井雄哉師の言葉)は、成熟した大人の素敵な生き方だと思いませんか。